日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.484 【スロートレーニングはどこに効くのか】高齢者の筋力に関するQ&A

質問

スロートレーニングの利点は分かりましたが、持続的に収縮させるということは、持久力に優れる赤筋のトレーニングと考えてよいのでしょうか?加齢では瞬発力に優れる白筋が衰えると聞いたので、効果的なのか疑問に感じました。

回答

質問をまとめると、主な疑問は以下の2点かと思います。
1.加齢により、白筋が衰えるのか?
2.スロートレーニングでは、持続的に筋を収縮させるので、持久力に優れる赤筋に効果的なのではないか?
上記2点に対して回答いたします。

まず、加齢により、白筋が衰えるのかについては、結論からいうと、加齢により白筋(以下、速筋)が衰えます。実際に加齢による速筋の減少や太さの経過を調べた研究では、外側広筋の速筋線維の割合は30歳で60%、80歳で30%まで減少しています。

また、速筋線維の太さは、30歳では遅筋線維の太さと比べて1.2倍ほどであったものが、80歳時には、遅筋線維の0.8倍まで低下しています(文献1)。加齢により速筋線維が減少並びに細くなる理由については、加齢により強い活動を行う機会が減るもしくはなくなるからです。速筋線維は主に強い力を発揮するときに使用される筋線維なので、加齢とともに強い力を発揮する機会が少なくなることで速筋線維が萎縮すると考えられています。

次にスロートレーニングでは、持続的に筋を収縮させるので、持久力に優れる赤筋に効果的なのではないかについてですが、こちらも結論からいうとと、スロートレーニングは速筋を鍛えるのに効果的です。その理由は、ゆっくりと動くことで、持続的に遅筋筋肉が収縮します。持続的に遅筋筋肉が収縮することで、筋肉内の血管が細くなり、筋肉への血流が少なくなります。筋肉への血流が少なくなると、筋肉は酸欠状態になり、遅筋線維だけでは動作を遂行することが難しくなってきます。よって、速筋線維が動員される状況になり、速筋線維を鍛えることができるというメカニズムになっています。バーベルやダンベルなど重たいものを使用せずとも、速筋線維が動員できる素晴らしいトレーニングがスロートレーニングです。是非、実践してみてください。

参考文献
1) サルコペニアのメカニズムとその予防・改善のためのトレーニング 石井直方 2018

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