日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.97大腿骨転子部骨折術後の離床難渋症例への対策

Q97.高齢の大腿骨転子部骨折に小転子転移を認め、貧血症状が強く離床が進みません。ADL改善に向けどのようなアプローチ・アセスメントが有効でしょうか。

A97.大腿骨転子部骨折の患者の方の多くは高齢であり、合併症が問題となるケースが多い疾患の1つです。この症例の場合は大きく2つの問題点があると思われます。1点目は骨折による疼痛、2点目は全身状態です。疼痛による問題ですが、大腿骨転子部骨折では小転子骨折を併発することが多く、長期間にわたり疼痛の訴えがある場合が多いです。骨癒合の状態、安静度や介助法を医師に確認しながら多職種で統一する必要があります。また、離床やリハビリ開始前の痛み止めの服用も一手かと思います。介入時に鎮痛が出来る様、時間を考えて服薬し離床時の疼痛による負のイメージを軽減することが大切です。全身状態の問題ですが、貧血による意欲低下だけではないように感じます。食事量の低下に伴った低栄養、貧血や電解質異常による低活動性せん妄などの可能性も考えられます。食事へのアプローチに関しては食形態や内容の再考、栄養補助食品の提供等を行い摂取量確保ができると良いです。貧血や電解質に関してはラボデータを継時的にチェックし、運動負荷の見直しや補正を行うようにしましょう。まずは全身状態の改善を行いながら、状態に応じて段階的な離床や病棟ADLから改善していくのが良いかと思います。