日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.93前傾側臥位の留意点と実施時間について

Q93.前傾側臥位を実施する際、下になるほうの上肢のポジショニングについて教えてください。また、2時間くらいとおおまかな目安で実施していますが、どの程度がよろしいでしょうか。

A93.前傾側臥位をとる際、下方になる上肢は斜め45°程度に外転させます。腋窩に体位変換用の枕を置きますが、この枕は下方の上肢に乗ると過度に上肢に荷重が加わり神経麻痺を起こす危険性があるため、注意が必要です。前傾側臥位とった際、体位変換用の枕は前胸部を支える程度と考えましょう。また、頭の枕の高さも重要です。枕が低すぎると、肩関節に過度の荷重がかかります。頭部の側屈が起きない程度の高さを心がけましょう。しかし、もともと肩関節の拘縮が強い方などは関節へストレスがかかりすぎる場合があったり、点滴ルート・ドレーンなどの関係で十分な体位が取れない場合も多いかと思われます。このような場合は、無理には行わず側臥位などに留める場合もあります。臨床で大事なこととしては基本的には、背側の胸郭を解放する環境を整えたり、特に長時間仰臥位のままを続けないことです。時間的には2時間程度がよく記載されているようですが、褥創などの発生を予防するためのようです。あくまで目安としておく程度でよいと思われます。臨床上では、処置などの問題、経管栄養の投与などで時間的な制限を受けることが多いかと思われますので、そのとき優先されることを考慮して体位調整を行うことが必要と思われます。大切なことは前傾側臥位にすることが目的ではなく患者の下側肺障害の改善によって酸素化の改善・肺胞換気を促すことです。けっしてルーチンワークせず、ポジショニングが行えれば、モニターや聴診などで体位の効果があるかどうかを確認し、胸写なども加味して評価していくことが必要です。また、循環動態が安定しており、ヘッドアップや離床が許可されているケースに関しては、前傾側臥位よりも起こした方が有用です。もちろん、モニタリングしながらが、前提となりますが、起こすことでも背側の換気は促進されますし、起立耐性の強化や、体幹・頚部の安定性向上、精神不活にもつながります。各ケースの適応、不適応をしっかりと話し合い、適切なケアを目指してください。