日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.91脳卒中患者における拡張期血圧の捉え方

Q91.脳卒中の病型毎に離床の基準を明確に教えていただきスッキリしました。一方で血圧に関しては収縮期血圧をメインで診るイメージがありますが、拡張期血圧は特に気にする必要はないのでしょうか。

A91.脳卒中の中でも「急性期」で、「出血性病変」に関しては収縮期血圧の管理が最も重要になると思います。何故ならば一般的に高血圧は脳還流圧が上昇し血腫が増大する可能性があるからです。拡張期血圧に関しては、ガイドラインなどでもフォーカスして記載させているものは見かけないので、収縮期をメインでみるイメージは確かにあります。しかし拡張期血圧は「虚血性病変」で特に管理が重要です。虚血性病変は脳梗塞が代表例です。脳梗塞急性期には脳循環自動調節能が破綻しているため、血圧依存性に脳血流が変動します。この時期の血圧低下は、ペナンブラ領域への局所脳血流低下により、病巣の拡大を生じる可能性があるため注意が必要です1)。脳血流=(平均血圧-内頸静脈圧)/脳血管抵抗
で求められ、平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)÷3
で求められます。つまり拡張期血圧の値は脳血流量に反映されるため、ペナンブラ領域を守るために重要です。離床やADL動作により血圧は容易に変動します。臨床的にも、このような動作による血圧変動で、脳卒中患者は脳血流が変動し軽い意識障害を起こすなど経験します。私達が行うケアや離床でも、常に脳血流は変動し、頭蓋内の環境に影響するということを念頭においておく必要があります。

文献
1.Bath P, et al. International Society of Hypertension(ISH): statement on the management of blood pressure in acute stroke. J Hypertens. 2003; 21: 665-72