日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.87呼吸ポンプ作用を促すことでのリスクを考える

Q87.呼吸ポンプ作用として静脈還流を促すことは理解できました。腹式呼吸や深呼吸を行うことで、腹部大動脈瘤(AAA)や スタンフォード分類A型解離の患者への悪影響はあるのでしょうか。破裂のリスクが高くなるなど、あれば教えていただきたいです。

A87.離床を安全に促すための腹式呼吸は、病棟でかつ簡便に出来る方法です。結論から申し上げると、呼吸ポンプ作用を促進させる深呼吸によって解離の進行や、AAAが破裂するまでの負荷はかからないと考えられます。ただし、動脈解離に対しては、血圧を上げすぎない事(SBP150以下)が重要で、誘因となる息こらえなどは控えたほうが良いでしょう。AAAも同様で、基本は血圧管理です。解離性胸・腹部大動脈瘤に関しては血管壁が脆弱化している可能性がありますので、こちらも高血圧や腹圧を上昇させる運動はできる限り避けたいです ね。通常、私達が臨床で説明・実施する深呼吸は、リラクゼーション効果を促し、血圧上昇を予防しますので、病態への影響はないと考えられます。ぜひ患者様の状態に合わせて離床を進めてください。ただし、呼吸を促すことで、息こらえや、全身に力が入りすぎる場合、恐怖感や疼痛が増強する場合などは血圧を上昇させる可能性がありますので避けた方が良いでしょう。患者様の表情などを観察しながら、心疾患の既往や合併性のある方のDVT管理が安全にできることを願っています。