日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.84喀痰が困難な症例への対応

Q84.筋萎縮性側索硬化症(ALS)や重症筋無力症の患者さんを担当していますが、咳嗽力が弱く、排痰が困難です。呼吸介助をうまく応用できますでしょうか。

A84.ALSや重症筋無力症など神経難病の方は、いわゆる拘束性換気障害であり、呼吸筋の問題から咳嗽力の低下があります。ラトリングが触知される場合、中枢気道付近まで喀痰が移動している所見となるので、徒手的呼吸介助の適応になると考えます。中枢気道付近にある喀痰を、より中枢側へ移動させたい場合、徒手的呼吸介助を加えた時に、呼気流速を上昇することができるため、排痰を援助できる可能性があります。しかし、繰り返し(3-4回)呼吸介助を行っても有効な排痰が出来ない場合は、呼吸介助を中止します。徒手的に排痰できる状況ではないと判断します。別の方法としては、カフアシスト等の排痰補助装置が有効です。排痰補助装置はマスクを装着し(気管切開患者は気管切開部に接続し)、一時的に陽圧をかけて肺を膨らませ、その状態から急激に陰圧にすることで排痰を援助する機器です。今回の患者さんのように、咳嗽力が低下する疾患に適応となります。勿論、患者さんには人工呼吸器の吸気時の様に陽圧が加わりますので、圧設定などは、少ない圧より開始し、徐々に慣れてもらうようにしましょう。また、排痰困難である咳嗽力の問題以外の要因として、痰が硬いなどのアセスメントも重要です。加湿が適切に行われているかも見直してみてください。排痰が促され、少しでも患者さんの不快感・苦痛が緩和されることを願っております。