Q82.抗凝固薬投与時の血液検査において、ワーファリン内服時はPT-INR、ヘパリン静注時はAPTTとのことでしたが、 何故同じ抗凝固薬なのに診る検査が違うのかわかりませんでした。
A82.凝固系の検査は具体的には凝固因子に関わる異常をみる検査です。凝固因子と一口に言っても、十数種類の因子があるため、凝固系の検査もいくつかの種類があります。PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):
プロトロンビン時間 国際標準比といい、講義でお話しした通り、主にワーファリンコントロールの指標となります。正常値は1.0です。例えば心房細動の患者さんで、ワーファリン内服時には、INR2.0~3.0が適正範囲とガイドラインで推奨されています。こちらは外因系凝固活性化機序を反映する検査です。凝固因子の中でもビタミンK依存性蛋白である、第Ⅶ因子をみています。APTT (activated partial thromboplastin time):活性化部分トロンボプラスチン時間といい正常値は約30~40秒です。これは主にDIC(播種性血管内凝固症候群)治療時のヘパリンコントロールの指標などに使用されています。こちらは内因系凝固活性化機序を反映する検査です。第Ⅻ、Ⅺ、Ⅸ、Ⅷ因子をみる検査です。PT-INRと共通で第Ⅹ、Ⅴ、Ⅱ、Ⅰ因子をみています。最近話題となっている非ビタミンK拮抗型経口抗凝固薬(NOAC)は、基本的にこの凝固系検査が不要であると言われておりますが、適正なコントロールを目指す上で、検査を推奨する意見もあります。その場合、薬剤の作用点によってPT-INRかATPPかみる検査が異なります。基本的には出血傾向をみる検査であるため、抗凝固薬が投与されている場合の離床の注意点としては、離床により転倒・転落すると、皮下出血等重症化しやすいため、外傷には特に配慮が必要であることです。使用薬剤、検査データも考慮し、安全な離床を心掛けて下さい。