日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A vol.70移乗時に下肢を突っ張ってしまう患者さんへの対処

Q70.上肢で突っ張る患者さんについては、Hard&Coverの手つかみ法や抱え込み法で移乗したらいいと学んだのですが、下肢で突っ張る患者さんにはどのように対応するのが適切でしょうか? シミュレーションしてやってみたのですが、なかなか突っ張る下肢に重心を乗せられず、無理な移乗になってしまった感じがありました。

A70.下肢で突っ張る、とのことですが、下肢を突っ張る原因から考えてみます。片麻痺による片側の過緊張であれば、膝ブロックによる部分介助が適応です。片麻痺ではなく両下肢が前方に突っ張ってしまう場合、まずはスタートポジションを再確認します。

座る位置を前方に移動しているか、
両足底がきちんと接地しているか、
アームレストに手は届くか、
また滑りやすい履物になっていないか、

といった点です。

スタートポジションも問題ないのであれば、屈曲相のみを実施してみて、患者さんに足底への荷重を何度も確認してもらいます。移乗したいあまり、離臀と座面に臀部を向ける動作が同時になってしまう患者さんは意外と多いです。まずは屈曲相から離臀することを意識する、練習することが大切です。臀部を座面に向けるのは、その後であることを理解していただきましょう。この屈曲相のみを練習していくことで、逃避的になる患者さんの気持ちが和らぐこともあります。
Hold&coverや抱え込み法といった部分介助の方法のポイントは、

患者さんが動きやすい状況になっているか、
協力できる精神状態になっているか、

ですので、原因の検索と不安感の軽減に努めることが肝要です。

上記アプローチを実施しても、前方への重心移動や足底への荷重が難しい場合は、全介助の膝もたれ法・かつぎ法・2名介助やトランスファーボードによる側方移動で移乗することを考えましょう。このような場合は、平行棒などで屈曲相と離臀の練習を繰り返し行い、部分介助での移乗獲得を目指すことになるかと思います。

患者さんの現状に合わせた介助法の選択とともに、患者さんの回復を見越した移乗動作の獲得計画をスタッフ間で考えていけると良いですね。