日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.734 【神経にやさしイイ起こし方とは?】離床・ポジショニングで末梢神経障害を防ぐには

質問

長期臥床後の患者さんで、離床を進めると上肢や下肢にしびれや違和感を訴えるケースがあります。腕神経叢や腓骨神経などの末梢神経障害を防ぐために、離床やポジショニングでは何を優先して考えるべきでしょうか?

回答

結論から言うと、まずは「神経が引き伸ばされない・圧迫されない姿勢」を確保し、そのうえで離床や動作を進めることが重要です。

末梢神経は、関節運動や筋活動に伴ってある程度の滑走・伸張に耐えられますが、持続的な牽引や局所的な圧迫には非常に弱い構造をしています。特に、「肩関節外転・外旋位での腕神経叢への牽引」「長時間の側臥位や端座位での腓骨頭部圧迫」「体幹の崩れによる腰神経叢への張力増加」などは、離床場面で起こりやすいリスクです。この状態で、「姿勢が悪いから」「動かないから」と無理に起こしたり、関節角度だけを整えようとすると、神経へのストレスが増大し、しびれや疼痛として表出します。

そのため第一段階では、関節角度よりも神経走行を意識した支持の作り方を優先します。具体的には、上肢では肩を過度に引かず、前腕・肘・手部まで連続した支持を確保することで、腕神経叢にかかる牽引力を分散します。下肢では、腓骨頭部への直接的な圧迫を避けるクッション配置や、股関節・膝関節の軽度屈曲位を用いて、腰神経叢から末梢神経までの張力を緩めていきます。これらは一見「細かなポジショニング調整」に見えますが、実際には、末梢神経を守りながら離床を進めるための土台づくりでもあります。

その後、神経症状が出にくい姿勢が確認できた段階で、端座位や立位などの抗重力位へ移行し、動作に伴う神経の滑走を少しずつ引き出していきます。つまり、「動かしてから神経症状が出ないか確認する」のではなく、「神経症状が出にくい姿勢を作ってから動かす」という順序で考えることが、離床・ポジショニングにおける末梢神経トラブルを防ぐポイントになります。

是非、離床時のしびれ・違和感・原因不明の疼痛に悩むケースの評価と対応を整理するヒントとして活用してみてください。

【離床に活かす末梢神経・ホルモンの解剖・生理学を学びたい方は】
3月18日(水)19:00〜21:00 ※2週間見逃し受講期間有り
解剖からトコトン読む 生理学総復習セミナー 末梢神経・臨床に関わるホルモン編
講師:町田 志樹 先生
https://www.rishou.org/seminar/theory/r361-2026#/

皆さんのご参加をお待ちしております。