日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.596 【視覚が使えないときのアプローチ】Pusher現象に関するQ&A

質問

Pusher現象のある患者さんで、覚醒が悪く、視覚フィードバックがうまく活用できない場合、どのようなアプローチが有効ですか?

回答

離床時間を増やして覚醒を促し、視覚以外の聴覚や体性感覚からのフィードバックを中心にアプローチするのがお勧めです。Pusher現象とは、非麻痺側の上下肢で床や座面を押して身体が麻痺側の方向に傾き、姿勢を戻そうとしても抵抗する現象です。

Pusher現象のある患者さんの場合、鏡や垂直指標を用いた視覚的フィードバックによるアプローチが有効とされますが、覚醒が低い場合や、注意障害があると、鏡や垂直指標などに注目しにくい場合や、注目できても視覚的なフィードバックが入りにくい場合があります。その場合は、姿勢の傾きを言葉で伝えたり、自らの姿勢の状況を言語化してもらったりする、聴覚からのフィードバックの活用や、麻痺側への体性感覚入力と非麻痺側への重心移動を促すアプローチが有効です。また、積極的に座位や立位などの抗重力位での活動を行い、覚醒を促すことも大切です。

具体的には、座位で骨盤・体幹の動きを伴った随意的なリーチ動作の誘導や、体重を免荷した状態での介助歩行による、非麻痺側および麻痺側への均等な体重移動の経験、および非麻痺への荷重感覚の再学習を促すなどのアプローチがあります。

最近の研究ではpusher現象のある患者がHALを装着したリハビリテーション後に、従来の姿勢保持訓練に比べて、非麻痺側上下肢の過度に押す動作が軽減して、姿勢が安定しやすくなったという報告もあります1)。より体性感覚情報が入りやすいアプローチ方法を患者さんに合わせて工夫してみてください。

文献
1)西村 正彦ら 脳機能ネットワークの観点から行うPusher現象の病態解析と新規治療法の開発

4月29日(月・祝) 10:00~16:00 ※2週間見逃し受講期間有り
脳卒中と運動器疾患の「運動制御」マスターコース 脳卒中の運動制御編
【講師】増田 司 先生
https://www.rishou.org/seminar/theory/r222-2024#/

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