質問
酸素療法をしている患者さんのSpO2 が100%だと危険な理由を教えてください。
回答
酸素療法をしている患者さんの、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が100%だと危険な理由は主に二つあります。
1つには「酸素分圧の低下に気が付きにくい」ことと、2つ目は「肺細胞障害」です。「酸素分圧の低下に気が付きにくい」ことには、SpO2 とPaO2の関係がポイントです。SpO2 が100%のときには、動脈血酸素分圧(PaO2)は約100 torrになります。酸素投与時には、PaO2は100 torr以上になることもあります。SpO2 では100%以上表示されることはなく、PaO2が150 torrでも180 torrでも、SpO2 では100%となります。
例えば、PaO2が180 torrから110 torrに低下した時には、呼吸状態の悪化が疑われますが、SpO2 では評価ができません。
もう一つは、高濃度酸素投与に伴い活性酸素が増加し、肺細胞障害を引き起こす可能性が高まることがリスクとして挙げられます。活性酸素には他の物質を活性化させる作用があり、殺菌力が強く、体内では細菌やウイルスを撃退する役割を持っています。ところが、活性酸素が増えすぎると正常な細胞や遺伝子まで攻撃してしまうのです。この活性酸素が肺細胞を攻撃することで、肺細胞障害を起こすといわれています。
よって、SpO2の値が100%の時は十分に酸素投与されていると判断せずに、過剰に酸素を投与している可能性を頭に入れておくことが重要です。基本的なSpO2の目標値は94〜98%、慢性呼吸不全などのⅡ型呼吸不全の患者さんは88〜92%が目安となります。
酸素投与量の基準を決めるのは医師なので、担当の医師に相談しながら、目標値を参考に評価して離床を検討しましょう。
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