日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.317 【我慢して伸ばすべき?】脳卒中後の合併症に関するQ&A

質問

髄膜刺激症状で項部硬直があるときは、無理に筋のストレッチをしないほうが良いとありましたが、その理由はなんですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

髄膜刺激症状では、筋が防御収縮をしているため、無理にストレッチすることは逆効果と考えます。髄膜刺激症状とは、髄膜炎やくも膜下出血によって髄膜が障害され、頭痛・嘔吐、項部硬直(後頚部が固くなる)が見られる状態です。髄膜は腰部まで通っているため、体幹の前屈や下肢の伸展も困難となります。くも膜下出血後には、起き上がりや靴を履く動作の際に痛みを訴えますが、この痛みや膜の硬さは一過性なので、無理にストレッチすることはお勧めしません。

また、髄膜刺激症状では、脊髄神経根の炎症・浮腫が生じるため、疼痛や筋攣縮が起こる(文献1)といわれているため、疼痛に対する筋の防御収縮と考えることもできます。それを無理に伸ばすことは、疼痛の増強につながるため、避けるべきと考えます。この時期は、疼痛を軽減するケアに努めつつ、できる範囲の離床を検討してみてください。

文献1 中 島健二,高橋和郎:脳室系異常による神経症状. Clinical Neuroscience 11:876,1993.