日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.127 X線単純撮影で心臓近くの炎症所見を見抜く方法とは?

質問

心臓の周辺は肺血管による影響で、炎症像が見つけづらいと感じます。心臓近くの肺炎所見を特定する方法を教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

人工呼吸器から離脱したばかりの患者さんを無理に離床させて再挿管・・・そんな事態は避けたいですよね。
まず、最初に評価していただきたいことは座位(特にヘッドアップ時)姿勢の耐容能です。その患者さんはヘッドアップで息切れが強くなったり、SpO2が下がったりしませんか?酸素化能が極端に悪い症例では、肺の柔軟性の指標であるコンプライアンスがヘッドアップにより悪くなることが報告されており1)注意を要します。ヘッドアップを行い、日本離床研究会の基準2)でSpO2 90%以上を保ち、Stillerらの基準3)でSpO2 安静時比4%以上の低下がなければ続行します。
ヘッドアップが30分以上可能となったら、端座位を試してみて下さい。
「ヘッドアップ座位で車椅子座位は同じではないのか?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、下肢がベッドより下にさがるだけでかなりの血流が取られるため、全介助であっても一度は試す必要があるかと思います。血圧の変動など循環動態をチェックし、5分以上端座位が可能となったら車椅子座位を試しても良いでしょう。
但し、移乗時の息こらえによる急激なSpO2の低下に注意する必要があります。公式テキスト166頁にあるよう、動作にあわせた呼吸法を徹底して指導してください。

まず、心臓の周辺は、質問の通り、肺動静脈の存在により陰影が見えにくくなっていることもあります。
特に手術後、臥位で撮影されたレントゲン画像は、肺うっ血所見も重なり肺炎像が余計に判別しにくい状況となります。
手術前や立位時のレントゲンを参考に、経時的変化がないかを観察することが大切です。
次に、心臓近くの肺炎所見を特定する方法ですが、心臓の右縁と左縁はそれぞれの肺区域に相当するため、まずは、心臓と肺区域との境界を理解しましょう。
右側は2弓(第1弓:S3、第2弓:S5)を、左側は4弓(第1弓:S1+2、第2弓:S3、第3弓:S4、第4弓:S5)の肺区域を示します。

細菌性肺炎の場合は、肺区域に一致して所見が示されることが多くあるため、心臓と接する肺区域に肺炎の所見がないかを確認します。
さらに肺炎所見のもう一つの特徴としては、その辺縁の形がまっすぐなのかどうかも注目してみましょう。

腫瘍などは外向きに凸となり、無気肺などは内向きに凸となることが多いため、浸潤影の辺縁の形を見ることで病変を知る手がかりとなります。
苦手意識を持つ人が多い画像診断ですが、ポイントを押さえると意外とわかりやすく、病態の改善・増悪をアセスメントするために有用なスキルです。
ぜひこの機会に画像診断に興味を持ってみてください。

参考文献:
実践!離床完全マニュアル2 
Chapter3 見えない危険を診る!胸部X線単純撮影の見方 
http://www.rishou.com/kanma2/index.html