日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.126 肝臓は沈黙の臓器

質問

がん患者さんでALT・AST・γ-GTPなどの肝機能の数値が著しく悪い場合は離床を促さないほうが良いのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ予備力の大きい臓器です。そのため、肝機能障害の初期を代償期といい、障害による症状を表立って見せないことがあります。

代償期を超え、症状が目に見える時期を非代償期と呼び、肝機能障害で有名な腹水や黄疸が認められます。非代償期では、ALT・AST・γ-GTPの数値は著しく悪化していて、基本的には離床を促しません。

具体的には、ALT/ASTが100 IU/L以上、γ-GTPが200IU/L以上の場合には、一度離床を立ち止まる必要があります。患者さんの疲労感・倦怠感を確認して、離床の可否を改めて計画しましょう。

ただし、臨床では終末期のがん患者さんなどの場合、病態的な改善が見込められない場合があります。

そのような場合は、患者さんご本人・家族・医療者側と十分に話し合いを行い、「最後に一度家に帰りたい」などのゴールに向けて離床を促す場合があります。

講座で伝えた各血液データの数値は、離床を一旦立ち止まり、本当に離床を開始・継続できるのか、考える時期の数値として紹介しました。

あくまで血液データは指標の一つであり、患者さんと寄り添いながら、そのほかのフィジカルや画像データも確認して、ベストな介入を行ってみてください。

  • 1) BITTNER, E: Changes in oxygenation and compliance as related to body position in acute lung injury , Am Surg 62:1038-1041, 1996
  • 2)曷川元 編著:離床の開始基準と中止基準、実践早期離床完全マニュアル:p145,2007
  • 3)Stiller K, et al: Safety issues that should be considered when mobilizing critically ill patients, Crit Care Clin 23:35-53, 2007