日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.114 右心不全と食欲低下の関係

質問

右心不全のうっ血所見で食欲低下があると説明されましたが、それはなぜですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

まず、心不全についてですが、心不全の原因は心臓のポンプ機能が低下した状態のことを指します。右心不全の場合には、体循環への影響が症状として頸静脈怒張や浮腫などがみられます。左心不全の場合には、肺循環への影響が症状として痰の貯留や呼吸困難などがみられます。今回の質問にある、右心不全による食欲低下については、体循環への影響である浮腫が関係しています。通常、「浮腫」と聞くと、四肢の浮腫を考えがちですが、実は、腸管や肝臓にもその浮腫は及んでいるのです。

心不全による浮腫を認める患者さんの手足に触れたことはありますか?

パンパンにむくみ、じっとりと冷たく、さらに浮腫により運動の制限も出てきます。これらの状態が腸管にも及んでいれば当然、消化管の運動自体が阻害される訳ですから食欲低下につながるのです。ここから考えられることは、「食事量が少ない」というアセスメントだけで栄養面にケアを行うのではなく、利尿剤の投与など、心不全に対する治療も考慮したケアが求められます。浮腫をみつける「視診」は、目に見えることを考えることですが、患者さんの内部まで見ようと考えることも、「視診」の一つではないでしょうか?