日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.102 PT-INRとAPTTの違い

質問

抗凝固薬投与時の血液検査において、ワーファリン内服時はPT-INR、ヘパリン静注時はAPTTとのことでしたが、
何故同じ抗凝固薬なのに診る検査が違うのかわかりませんでした。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

凝固系の検査は具体的には凝固因子に関わる異常をみる検査です。
凝固因子と一口に言っても、十数種類の因子があるため、
凝固系の検査もいくつかの種類があります。

PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):
プロトロンビン時間 国際標準比 といい
講義でお話しした通り、主にワーファリンコントロールの指標となります。
正常値は1.0 です。

例えば心房細動の患者さんで、ワーファリン内服時には、
INR 2.0~3.0が適正範囲とガイドラインで推奨されています。
こちらは外因系凝固活性化機序を反映する検査です。
凝固因子の中でもビタミンK依存性蛋白である、
第Ⅶ因子をみています。

APTT (activated partial thromboplastin time):
活性化部分トロンボプラスチン時間 といい
正常値は 約30~40秒 です。

これは主にDIC(播種性血管内凝固症候群)治療時の
ヘパリンコントロールの指標などに使用されています。
こちらは内因系凝固活性化機序を反映する検査です。
第Ⅻ、Ⅺ、Ⅸ、Ⅷ因子をみる検査です。
PT-INRと共通で第Ⅹ、Ⅴ、Ⅱ、Ⅰ因子をみています。

最近話題となっている非ビタミンK拮抗型経口抗凝固薬(NOAC)は、
基本的にこの凝固系検査が不要であると言われておりますが、
適正なコントロールを目指す上で、検査を推奨する意見もあります。
その場合、薬剤の作用点によってPT-INRかATPPかみる検査が異なります。

基本的には出血傾向をみる検査であるため、
抗凝固薬が投与されている場合の離床の注意点としては、
離床により転倒・転落すると、皮下出血等重症化しやすいため、
外傷には特に配慮が必要であることです。

使用薬剤、検査データも考慮し、
安全な離床を心掛けて下さい。