日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

「臨床の困ったに応えます!「離床させる」を「自ら起きる」に変える 患者さんを中心としたゴール設定の考え方」のレビュー

今回のセミナーでは、森川 明 先生 (第二東和会病院)が患者さんを中心とした離床のゴール設定を立てる際のポイントをわかりやすく伝えてくれました。「ただ座っている離床ではなく、目的を持つ離床が必要だ」という内容は、離床をすすめる我々に一石を投じるものでした。

以下に、講演内容を一部紹介していきます。

まず森川は、離床の時間を増やすことによるメリットを、『リハビリテーション医学 著:上田敏』を用いて、1日4時間以上を座っていれば高齢者の廃用を予防することができる、と紹介しました。しかし、最近の研究から「4時間という長い時間の座位は身体に悪影響を及ぼす可能性もあり、ただ座っている時間だけでなく、1日60-75分身体を動かすことが必要である」とし、ただ座っている時間を増やすのではなく、離床とともになにか目的を持った動作が必要である、と訴えました。

患者さんには、「離床させられる」という受け身の離床が多く、「自ら起きる」という気持ちに意識を変えるためには、患者さんのニーズを聴きながら退院後の目標を立て、離床することで得られるメリットを理解してもらうことが大切です。医療従事者には、患者さんのニーズを引き出すコニュニケーション能力が求められます。

具体的に、森川は「自ら起きる」を引き出すコミュニケーションのコツとして、離床を促すための初期対応を意味する造語「MFA:モビライゼーション・ファースト・エイド」を紹介し、臨床で多用しがちな、「〇〇しましょう」という”魔性の言葉”を使うことに注意するべきだと呼びかけました。この言葉は、医療従事者の意見を患者さんに押し付ける命令形の言葉となる場合もあり、多くの医療従事者が、無意識に使用しているのではないでしょうか。

この講座の最後には、ダメなコミュニケーションの例として、

1.一方的

2.具体性に欠ける

3.ゴールが見えない

上記の3つを挙げ、これらを改善しなければ、患者さんのニーズを無視した、医療従事者だけのゴール設定となることに警鐘を鳴らしました。

今回のセミナーを通じて、離床が大切だという当たり前のケア・アプローチだからこそ、患者さんのニーズを最大限聴いて設定するゴールこそが、離床を促すメソッドであることに気づくことができました。

是非、現場で活躍する多くの医療従事者に受講してもらいたい講演です。

次回は10月31日オンラインにて開催予定です。

https://www.rishou.org/seminar/theory/r53-2021#/