日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【学術大会演題発表のQ&A大公開】

先日行われた、日本離床学会 第11回 全国研修会・学術大会での一般演題発表の発表動画を公開し、皆さまから質問・コメントを募集しました。

その質問・コメントについて、発表者からの回答がありましたのでシェアいたします。

臨床的な質問と回答で、とても参考になるので、是非、ご覧ください。

演題名:重度遷延性意識障害患者の在宅での歩行用リフトを使用した立位・歩行リハビリテーションについて

【質問・意見】

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〇質問
障害が重度であっても維持期であっても、姿勢・活動から変化をもたらされていた治療をみて、患者様の限界をセラピストが作らないようにと身が引き締まる思いがしました。質問ですが、リフト上での立位・歩行練習実施のための準備や脱着にかかる時間は何分くらいですか?当院では現在リフトがないのですが、いま図面作成中の新病院に天井走行式のリフト導入の案が出ています。現状、一人の患者様に20分多くても40分しか治療時間がかけられない中で本当にリフトを活用できるものだろうかと思い質問しました。

●発表者からの回答
ご質問ありがとうございます。
生活期において特に「回復期」で立位・歩行などの積極的なトレーニングの実施ができなかった患者様のリハビリテーションアプローチについて発表し、多くの先生方に聞いていただきたかったのでうれしいです。
 歩行用リフトの着脱に関してですが、発表させていただいた重度の遷延性意識障害(完全植物状態)の場合、(1)ハーネス装着(約2分)、(2)両側長下肢装具(約2分)、(3)頸椎カラー(約30秒)、(4)リフトとハーネスの接続・立位完成(約30秒)で実施できております。現在は、約4分30秒~5分ですが使用当初はハーネスの装着位置やベルトの締め加減など10分以上掛かっていました。背臥位でのハーネス装着ですのでハーネスを体の下に通すなど通常より手順は多いですが、コミュニケーションが可能な方や頸椎装具・長下肢装具が不要な方などの場合は5分以内で十分可能だと考えております。

2

〇質問
遷延性意識障害の原因となった要因を見ると、頭部への傷害が多い(低酸素や脳卒中、外傷など)、あまり強い刺激を与えるとてんかん(痙攣)を引き起こす危険性はありませんでしょうか?実際に介入中に急変した症例、もしくは介入時ではないが、積極的リフトを使用した症例で、急変もしくは痙攣を引き起こし入院された症例はいないのでしょうか?

●発表者からの回答
在宅医・訪問看護師・介護士と十分な情報共有をし、てんかん発作については十分注意してリハビリテーションも実施しております。発表させていただきました16名の重度遷延性意識障害の患者様に関して2015年からのてんかん発作の発症はありません。退院直後は、ほとんどの患者さんは離床時間が短く(又は離床経験自体がほとんどない)ベッド生活が基本になっておりますが、全身状態をみながらリハビリテーションでの座位・立位耐久性向上を進めながら看護師・介護士(もちろんご家族もですが)を中心に生活行動再学習(起床・就寝時間・日中ベッド臥床30分以内・トイレ座位など習慣化)をベースに離床量を調整しております。

3

〇質問
先生の所属されている施設では、スタッフの誰しもが、リフトアプローチができるスキルがありますか?それとも武藤先生のみのように限られたスタッフになるのでしょうか? とても良い試みだと思いますので、広く広まることを願っております。

●回答
当施設では、僕の介入時間に合わせて同席をしてもらいほぼ全員のスタッフが使用できるようにしております。また、他事業所のセラピストの先生などとも一緒に担当させていただくことも多いですので時間を合わせて見学していただき、逆に僕の方が同席させていただき装着方法など確認させていただくこともあります。

他の演題の質問と回答も順次公開していきますので、楽しみにお待ちください。