日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

OT専門部会

【OT専門部会とは…】

「OT専門部会」は全国で活動している本学会会員のOTの中から、有志のメンバーで構成し運営しています。当部会活動の大きな目的は、「離床という枠組みの中で、OTがどのような役割を担い、活動すべきか」、活動を通してその指針を見出し、提案していくことにあります。

【離床チームの中の“OT”】

 現代医療は多職種協働のチームアプローチが、メインストリームとなっています。患者の離床において、我々OTも専門家チームの一員として活動することが求められており、他職種からOTに対する期待値も年々高まっているものと感じられます。しかしながら、特に離床時期においてはPTやNsによる治療やケアの内容がオーバーラップする部分も非常に多いのが実情であり、その中で自らのアイデンティティの確立に悩まされるOTも多いのではないでしょうか?

離床に携わるOTは専門職としてどのように考え、何を行えばいいのか、そして何を行うべきなのか。OT専門部会ではその方向性を見出すべく、各部会員から知見や意見等を持ち寄り、ブラッシュアップしたものを共有する作業を行っています。いずれはそれらを統合し、当部会からの指針として提示することを目標としています。また、部会員協力のもと多施設共同研究なども実施し、新たな知見の創造・発信に取り組んでいきたいと考えています。

【“離床OT”へ】

OTからの視点が加わったアプローチが、「離床」という取り組みの中において必要不可欠なものであると、我々部会員は信じています。離床場面でOTの専門性を最大限発揮するためにはどうすればいいのかを追求し、“離床チームにOTあり!”の筋道を確立していくよう、活動していきたいと考えています。

※OT専門部会は「OTの離床」に興味のある有志の先生方を募集しています。部会員同士、肩肘張らずにいろいろと意見交換をしながら、“離床OT”の形作りをしていきたい考えていますので、興味のある方はぜひお気軽にご連絡ください!

 

【~離床に役立つ、“OTからの提言”集~】

◎初回の患者介入時には、まず本人の“言葉”を徹底的に聞く事にように心掛けることが大切です。リハビリに対する意気込みや病気に対する不安、悲哀や怒りなどをできる限り表出してもらい、傾聴します。患者との信頼関係の第一歩です。

◎OTの離床は正攻法だけではない。

高齢化による認知機能、せん妄による理解力の低下によって離床に難渋する事があると思います。「寝ていると廃用になりますよ」という言葉が患者の心に届かない事もあります。そんな時、患者の生活歴やキャラクターに目を向けて、「今日は誕生日だったんですね。詰め所でお祝いしましょう。」「元警備員さん、なんですね。一緒にこのあたりの巡回をお願いできませんか?」など少しだけ、その人に由来する事を離床にエッセンスとして加えると離床が円滑に進む時があります。

◎意識障害のある患者様に対して

皆さんは意識障害のある方に対して、どんなリハビリをしていますか?ヘッドアップや端座位、関節可動域訓練…といった内容が多いと思われます。その時、こんな視点を加えてみてはいかかでしょう?「絶対に目を覚ましてくれるはず…、絶対に聞いていてくれるはず…」と常に考え、接する。そうすると、普段のリハビリの内容に付加する事が増えてきます。例えば、声かけをしながら清拭や整髪を行ったり、少しでも目が覚めたら鏡を見せて姿を見てもらうなど。いろいろな方法で、刺激入力を行う工夫をしていきましょう。

◎社会復帰に向けての対応の第一歩として、治療者側が対象者を「必要以上に患者にしない」ことに注意しましょう。患者は入院をきっかけに社会との関連性を遮断され、図らずも介助を要する状態に突如置かれてしまいます。そういった状況の中で、さらに長期間受け身の状態が続くと、精神的な自立性もいつの間にか奪われていってしまいます。まずはセルフケアについて、必要な部分はアシストしながらも、「できることは、自分でしてもらう」を徹底することが大事です。厳しく、温かく見守りましょう。お互い、時間と根気が必要です。

◎看護師とのコラボレーション

「ICUや救急センターだと、OTだけではできる事が少ない」と思われている方が多いのではないでしょうか?そんな時は看護師さんに協力してもらったうえでできることに、視野を広げてみてはどうでしょうか。例えば、OTが端座位保持をアシストしながら、看護師さんに患者を着替えや歯磨きを一緒にしてもらう等です。一人では困難でも、二人ならできることはいっぱいあるはずです。大変な時こそ、チームで協力していきましょう。

◎OTの考える「関節可動域訓練」

関節可動域訓練は、運動療法が得意なPTの分野であると思われている事が多いと思います。では、OTが行う必要は無いのか?という話ですが、OTは主に患者様の「生活」に焦点を当てています。対象の患者様がこれまでどんな生活をしていたかによっても、1人1人必要な可動域は異なってきます(例えば、車椅子を使用していた等)。そういった視点で考えると、OTによる関節可動域訓練も重要となります。

◎食事場面でのアプローチを行う際、まず注意を払わなければいけない事は患者の姿勢です。頸部が楽に軽度前屈位で保持でき、また上肢動作に努力を要しないポジショニングにセットすることを心掛けましょう。

◎こんな道具があればなぁ。。。

「もっとスプーンが握りやすかったら」「もっと靴が履きやすかったら」「もっと車いすのブレーキが長かったら」患者のADLが自立するのにな・・・という場面ありませんか?OTは患者のADLを楽にする、やりやすくする、自助具に詳しいです。自助具の選定や患者に応じた自助具の作成が可能ですので、「もう少しで」って悩んだ時には、相談してみて下さい。

◎患者には見えない障害が潜んでいることも。

なぜかADLに難しさやぎこちなさがあるけど、理由がわからない時ってありませんか?皆さんは高次脳機能障害というのをご存知ですか?脳卒中患者を診療している部門ではなじみがあるかもしれませんが、簡単に言えば、人間らしい行動がとれなくなる障害です。(Ex.道具が使えない。行動計画が立てられない。すぐ感情的になってしまう。)

体は動くのに、できない事が多い。。。そんな時は、高次脳機能障害を疑う必要があります。OTは高次脳機能障害やその評価を知っている専門職です。気になる患者がいたら、OTに声掛けしてみてください。