【問題】
COPDの既往のある患者が喘息発作による呼吸困難感を主訴に入院した患者の離床を検討している。血液ガスデータを確認したところ、pH 7.36, PaCO2 55 Torr, PaO2 60 Torr, HCO3– 28 mmol/Lであった。血液ガスデータの解釈と離床の考え方について、適切でないものを一つ選べ。
選択肢:
- COPDの患者は、慢性的に二酸化炭素が貯留していることが多く、大量の酸素投与は二酸化炭素ナルコーシスのリスクとなるため注意が必要である
- 離床を行う前に低酸素の改善が必要である
- pHの低下は、HCO3– の上昇を一次性変化として起こったものと考えられる
- 離床する際には、二酸化炭素の貯留を防ぐため、動作に合わせて呼気を促すことが重要である
- 離床に伴う低酸素が慢性的に持続するようであれば、在宅酸素を検討すべきである
【回答】
正解 3
解説
PaCO2はアシドーシスに、HCO3–はアルカローシスに傾いている関係は、pHの異常を中性に戻そうとしている代償反応であることが考えられる。つまり、どちらかが増加すれば、バランスを取るように、もう一方も減少する関係となる。
どちらが代償反応よるものか、0.6の法則を使用することで見極めることができる。
PaCO2 × 0.6の値がHCO3–の代償限界値
HCO3– ÷ 0.6の値がPaCO2の代償限界値
上記に当てはめると、
PaCO2 とHCO3– はどちらも基準値から外れているため、一次性変化によりpH異常が起こり、その後代償反応によりpHが中性に戻ろうとしていると推測できる。
計算式は以下の通り:
PaCO2 (55)× 0.6 = 33(HCO3– 33まで許容範囲)
HCO3– (28) ÷ 0.6=46(PaCO2 46まで許容範囲)
PaCO2 の実測値は55であり、46の代償限界値を超えているため、一次性変化は呼吸性であると考えられ、HCO3– は代償反応として増加している。
よって、一次性変化はPaCO2の上昇と考えられるため、3は誤り。