日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.99 介助時の重心の考え方

質問

様々な介助法を体験し練習することができたのですが、患者さんに重心を近づけることが重要で、抱きかかえるような指導を受けたことがあります。重心の近い、遠いはどのように考えれば良いでしょうか。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

確かに患者さんと介助者の重心が近く、アームが短い方が必要になる力は少ないかと思います。

抱きかかえることで安心する患者さんや介助者もいるかもしれません。
しかし、移乗介助において、患者さんが運動機能を最大限に使って欲しい、より動けるようになって欲しい、というコンセプトに重きを置いた場合、ただ重心を近づければ良いというわけではなくなります。

考え方の1つとして、介助量によって患者さんと介助者の距離は、異なるという考え方があります。

例えば、ある程度、自身の力で起立~移乗が行える患者さんに対して、密着するというのは不自然ですね?

起立に際しては、重心を前方に移動し、足底に荷重して下肢を使っていきます。

重心が移動する余裕・自由度が必要なのです。よって「Lの法則」では患者さんを邪魔しない距離感を保っている訳です。

対して、全介助となると患者さん自ら重心を動かすことは困難なので、患者さんの両下肢の間に介助者の足を入れ、重心をしっかり近づけることに重きを置きます。

勿論、患者さんの運動機能に改善の兆しがみえてきたら部分介助に変更していき、患者さんの自由度を広げていくことを考えなければなりません。

重心の近い・遠いに着目した場合は、患者さんの運動機能を評価して調整・選択することが大切です。