日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.91 早期離床を退院につなげるための介護保険の基礎知識

質問

当院でも在宅支援が急速に必要になっており、その助けになればと思い講座に参加させていただきました。
身体や精神のアセスメントやケアの方法はとても興味のあるお話でしたが、臨床では退院支援の際に、金銭面などのお話が出てきて、先に進まなくなるケースがあります。
介護にいくらくらい費用がかかるのかなど、教えて頂ければ幸いです。(12年看護師:地域包括ケア病棟勤務)

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

講座で得た知識・技術、是非伝達講習などで広めて頂ければと思います。
さてご質問にありましたように、確かに臨床で退院支援する際に、費用面は重要なファクターです。
「介護にいくらかかるか、ではなく、いくらかけるか」という視点で費用の問題をとらえてみてください。

皆さんご存知のように、2000年から介護保険制度が導入され、そのことで一気に費用負担の面で補助が受けられるようになったと同時に、介護は家の問題だけではなく、社会全体の問題という認識が広まりました。
この介護保険制度は「走りながら考える制度」とも呼ばれるように、何度も修正され、とても活用できるものへと変化してきております。

しかし介護の基本は、「自己申告」ですので、情報をいかに掴むのかが、介護生活の明暗を分けるわけです。

そこでわれわれ医療介護スタッフが、難しい制度と悩ましい心身の状況を「交通整理」し、情報を提供していくことが、今後求められる知識だと考えております。

簡潔に捉えると、介護が必要になった場合、介護認定を受けます。
その際、要支援1から要介護5まで7段階に区分分けされ認定されるのです。
保険適応になる金額は、区分が1つ上がるごとに

約5万円ずつ上がっていきます
(例:要支援1なら約5万円、要支援2なら約10万円)。

その金額に応じ、福祉用具のレンタル、通所・訪問・宿泊などの介護サービスを選択していくのです。

また高額介護サービス費制度というものがあるため、ある一定の金額以上は後で還付されることもあります。

自宅ではなく施設入所を考えられる場合、特養・老健・療養などでは保険が適応され負担額が少ないのですが、有料老人ホームやサ高住では倍額ほどかかることも多く、年金額や貯蓄、親族の支援などにより選択肢は左右されます。

ここでは全てを述べることはできませんが、ここまで読んでいただき、「あ、自分はその分野の知識が薄いな」と感じられましたら、是非一度各成書で学んでいただければと思います。

え?学ぶのが面倒?大丈夫!病院内、施設内、地域にはそれらを良く知る人材が数人はいるはずです。
まずはその人とお近づきになり、困ったときに相談し合える環境を整えてください。
それこそが、今重要視されている「連携」そのものなのですから。