日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.9 酸・塩基平衡の異常と原因判断の仕方

質問

血液ガスデータの見方の代償性変化の項で「0.6の法則」を教わったのですが、計算をする時にHCO3/0.6で求められた値は、1次性変化でのCO2を意味するものなのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

HCO3/0.6で求められた値は、CO2とどちらが1次性変化したのか(どちらが原因でPHがくるっているのか)を判断するために計算するものです。ですから計算値=CO2の一次性変化の度合いを示すものではありません(かならずしもCO2が原因とは限らないので)。

HCO3から一次性変化を推測する場合、以下の2つのパターンがあります。

  1. アルカローシスの場合(PHが7.4より上がっている場合)
    この場合はHCO3・PCO2ともに正常値よりも上がっているケースと推測されます。
    ですので、実測値が式による予測値より上回っているかで判断します。実際のPCO2値がHCO3/0.6の値に上がりきっていない→CO2による代償が起こっている過程にあることがわかる→HCO3が犯人→代謝性アルカローシス
    実際のPCO2値がHCO3/0.6の値を超えて高い→CO2による代償ではなくCO2が犯人(代償は1次性変化を超えられないから)→呼吸性アルカローシス
  2. アシドーシスの場合(PHが7.4より下がっている場合)
    この場合はHCO3・PCO2ともに正常値よりも下がっているケースと推測されます。
    ですので、実測値が式による予測値より下回っているかで判断します。実際のPCO2値がHCO3/0.6の値まで下がりきっていない→CO2による代償が起こっている過程にあることがわかる→HCO3が犯人→代謝性アシドーシス
  3. 実際のPCO2値がHCO3/0.6の値を超えて低い→CO2による代償ではなくCO2が犯人(代償は1次性変化を超えられないから)→呼吸性アシドーシス

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