日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.74 ワルファリンの持続効果

質問

既往に心原性脳塞栓症があり、ワルファリンを服用されていた患者さんが心不全増悪ということで入院されました。入院後の採血よりPT-INRが9.0と高値を示しており、ワルファリン一時中止となりました。1週間経過後の採血でもPT-INRが9.0と変わらない状態でした。この時の離床はどこまで行ってよいのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

まずPT-INRとはワルファリン内服されている方の、血液凝固が始まる値を示しています。

基準範囲は1.0とされ、ワルファリン内服中の方は、2.0-3.0でコントロールされています。

高齢者(70歳以上)は1.6-2.6で、コントロールするように脳卒中ガイドラインで推奨されています。

その背景に、山口1)は80歳未満の高齢者のPT-INRを1.5-2.1でコントロールするグループと2.2-3.5でコントロールするグループで比較検討した結果、1.5-2.1でコントロールしているグループがより安全であると報告しています。

上記の文献より、常用量では出血性イベントが多く出現することがあるため、高齢者でPT-INRが低く設定されていています。

PT-INR 9.0について解説します。ワルファリンの効果は服用後12〜24時間に発現します。十分な効果は36〜48時間後、その後48〜72時間持続します。

結果効果で持続する方は最長でも、48時間+72時間=7日間かかると考えられます。

1週間後のPT-INRが9.0と高値の場合には、継続して検査を見ていきます。また離床については、バイタル変動、神経所見の変化、さらに外傷による出血や貧血に十分注意して離床を進めます。

基準値から外れるととてもいけない状況だと思い、離床を止めてしまいますが、
一番大事なのは、そこで考えるために止まって考えられることだと思います。

今回の悩みは、今後 PT-INR 9.0である方を担当した時、今後に生かされる知識だと思います。日々の臨床を頑張ってください。

1) Yamaguchi T. Optimal intensity of warfarin therapy for secondary
prevention of stroke in patients with nonvalvular atrial fibrillation:
a multicenter, prospective, randomized trial. Japanese Nonvalvular
Atrial Fibrillation-Embolism Secondary Prevention Cooperative Study
Group. Stroke. 2000; 31: 817-21.