
質問
不全の頚髄損傷後、上下肢にしびれが残り、立位や歩行でふらつく患者さんがいます。しびれの改善とバランス練習、どちらを優先してリハビリを進めるべきですか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣
結論から言うと、まずは転倒リスクを下げる=安定性の確保を優先しつつ、同時にしびれ×バランス制御を“セットで評価して介入”するのが最短ルートだと考えます。
不全頚髄損傷のしびれでは、触覚や深部感覚が鈍くなり、足底の「踏んでいる感覚」や関節位置覚が曖昧になります。すると、姿勢制御が視覚頼みになり、少しの外乱でふらつきやすくなります。ここで大事なのは、「しびれを治してからバランス練習」でも、「バランスだけやって感覚は後回し」でもなく、感覚入力と姿勢反応を組み合わせて整えるという発想です。感覚だけを狙って難しい課題を先行すると、代償が強まり転倒を招きかねませんし、反対にバランス課題だけを増やしても、感覚入力が不確かなままだと再現性が上がりにくいからです。
第一段階では、平行棒・歩行器・ハーネスなどで安全域を作ったうえで、立位の安定性と接地感覚の再現性を同時に作ります。
具体的には、支持基底面を広げた立位で荷重左右差の調整、体幹の正中化、股関節・足関節戦略の獲得を行いながら、必要に応じて短下肢装具や足部テーピングで接地のばらつきを減らします。目標は「まず立てる・止まれる」状態を作ることです。痙縮や疼痛、起立性低血圧が出やすい場合は、負荷量を落として質を保つ判断も重要です。同時並行で、足底への段階的荷重、関節位置当て、触覚弁別、振動刺激、ミラーでの視覚フィードバックなどを用いて、入力を増やす感覚再教育を入れていきます。この時点でのポイントは、感覚だけを単独で練習するのではなく、支持・装具・視覚など、感じられる条件を整えたうえで動くという組み合わせにすることです。
第二段階では、視覚依存を減らす条件と外乱への反応を組み合わせて負荷を上げます。目線固定や頭部回旋、柔らかい床面、軽い外乱、ステップ反応へ進め、しびれが残っていても崩れにくいバランス制御を定着させます。
最後に、実用場面として廊下歩行では、歩隔・歩幅・リズムを指標化し、疲労で崩れる前に休むルールも共有します。しびれの程度・ふらつきの出方・疲労での崩れ方をセットで確認することで、安全に離床量を増やしやすくなります。
まとめると、優先順位は転倒リスクの管理ですが、進め方は常にしびれとバランス制御の“組み合わせ”で介入するのが近道です。是非、参考にしてみてください。
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