日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.718 【どこから攻める?】肩関節の代償動作に対するアプローチ

質問

肩関節の「痛み」と「外転筋力低下」の問題点が重なり、肩関節挙上時に代償動作が生じている患者さんがいます。どちらの問題点に優先的にアプローチすれば良いですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

結論から言うと、「痛み」と「筋力低下」を切り離してどちらかだけを優先するのではなく、痛みを増悪させない範囲で保護しながら、その中で筋力と動作パターンを整えていくことが重要です。肩関節挙上時の肩甲帯のすくみ上がりや体幹側屈などの代償は、多くの場合「痛みを避ける動き」と「外転筋群・腱板の機能低下」が組み合わさって生じています。痛みが強い段階で、いきなり外転筋を強化しようとして抵抗運動を入れると、上腕骨頭の上方偏位やインピンジメントを助長し、かえって代償を固定化してしまう可能性があります。

そのため、まずは痛みを悪化させない可動域と負荷の設定が第一です。具体的には、疼痛の少ない肩甲骨面外転での挙上や、肘屈曲位・前方挙上位など、症状が軽い肢位を選び、重力負荷を減らした状態での挙上練習から始めます。同時に、徒手やテーピング、タオルを壁につけて滑らせるような壁スライドなどを用いて、肩甲骨の後傾・上方回旋を促しつつ、挙上初期の代償を抑えます。ここでは「高く挙げる」ことよりも、「痛みが出ない範囲で正しいパターンを繰り返す」ことを優先します。

そのうえで、次の段階として外転筋群と腱板の筋力・持久力にアプローチしていきます。痛みが落ち着いてきたら、側臥位での外転練習や、セラバンドを用いた軽負荷の外旋・外転、さらに下肢・体幹と連動させた四つ這い・壁押しなどでの、肩甲帯安定化エクササイズを加えていきます。このときも、「代償が出たら可動域を戻す・負荷を下げる」というルールを徹底し、常にきれいなパターンで力を出せているかを確認することがポイントです。是非、症状や問題点が複数あるケースのアプローチの参考にしてみてください。