日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.690 【代償反応の速さを見極めよう!】酸塩基平衡に関するQ&A

質問

脳出血後の患者さんで、気分が乗らず、促さないと離床が進まない方がいて困っています。どうすればいいですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

ズバリ、「日常のHCO3-の使用」が原因です。詳しく解説していきます。

HCO3-の増加による代謝性の代償反応には、急性反応と慢性反応に分かれます。急性反応とは、CO2を赤血球とヘモグロビンが緩衝して、HCO3-に変換した反応です(図中 マル1)。よくある例としては、人工呼吸器の分時換気量を減少させて、PaCO2が急激に上がると、すぐにHCO3-が増加する反応がこれにあたります。

ヘモグロビンによる急性反応の後に、二つ目の慢性反応が起こります。慢性反応とは、急性反応後にゆっくりとHCO3-が上昇することを指します(図中 マル2)。慢性反応は、腎においてHCO3-の再吸収を促進している反応で、腎による代償には、数日かかります。

「腎臓は、HCO3-の産生と再吸収を行っているので、なぜ数日もかかるの?」と感じられる方もいると思います。まず、産生されるHCO3-については、正常な状態でも、腎で産生されるHCO3-のほとんどは、不揮発性酸といわれる、水素イオンや窒素などを代謝するために使われてしまうため、余剰がありません。次に、再吸収についてですが、元々HCO3-の9割以上のほとんどが、腎で再吸収をされています。

これらのことから、代償反応で再吸収を増加させても、短時間で増える量は僅かであるため、腎がHCO3-を増加させるのに数日かかるのです。臨床では、HCO3-による代償は、時期によっては離床が負荷になることを念頭に置いて、離床を検討するようにしましょう。

引用文献 曷川 元,黒田 智也 編著:Q&Aとアウ値で学ぶ検査データが丸ごとわかる本.慧文社,2020.p124.