日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.685 【異常歩行から何を考えるか】変形性股関節症に関するQ&A

質問

変形性股関節症で全人工股関節置換術を行った患者さんを担当しています。術後もトレンデレンブルグ歩行が残っているのですが、中殿筋を強化すべきでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

中殿筋はもちろんですが、腰方形筋にも着目すべきと考えます。そして加えて、「股関節にかかる負担をどう減らすか」という視点も非常に重要です。

変形性股関節症に多くみられるトレンデレンブルグ歩行は、患側立脚期に反対側(健側)の骨盤が下がる歩き方です。教科書的には中殿筋の筋力低下が主因とされますが、実際には骨盤を安定させるもう一つのキープレイヤーである腰方形筋も忘れてはなりません。中殿筋が骨盤を外側から支えるのに対し、腰方形筋は体幹側から骨盤を引き上げ、歩行や立位でのバランスを保っています。特に術前から長年にわたって跛行していたケースでは、腰方形筋の活動が術後もうまく回復せず、トレンデレンブルグ歩行が残ることがあるのです。

さらにこの歩行パターンが続くと、股関節周囲に余計な剪断力や圧迫力が加わり、せっかく手術で整えた人工関節に再び負担をかけてしまう恐れもあります。つまり、単に「筋力をつける」ではなく、「再発を防ぐためのバランス改善と荷重コントロール」という視点で、リハビリを考えることが求められます。

術後のアプローチとしては、中殿筋だけでなく腰方形筋、さらには体幹の安定性にも目を向けることが、歩行の質を上げ、股関節への負担を最小限にする鍵となります。アセスメントの幅を広げ、“股関節を守る歩行”へと導く視点を取り入れてみてください。