日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.666 【クスリからわかるリスクとは?】薬剤と離床に関するQ&A

質問

くも膜下出血で最近使用されることが増えている、クラゾセンタンを使用している患者さんの離床の留意点教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

くも膜下出血発症後4日から2週間の間は、脳血管攣縮による、遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia, DCI)を引き起こす可能性が高い時期です。

クラゾセンタンは、くも膜下出血(SAH)後に発生しやすい脳血管攣縮の予防および、脳虚血症状の改善を目的に使用され、血小板凝集を抑制し、血流を維持することで遅発性脳虚血のリスクを軽減する薬剤です。クラゾセンタンは、従来のファスジル塩酸塩水和物やオザグレルナトリウムより、脳血管攣縮の抑制効果が高い可能性が示されています。

一方で、クラゾセンタンは、血管収縮を強力に抑制することから、肺水腫や脳浮腫体などの、体液貯留による合併症が起こりやすいとされています。

離床の留意点としては、肺うっ血による呼吸の変化、脳浮腫による頭痛・クッシング現象の出現などに気をつける必要がある点です。安全に離床を進めるためにも、くも膜下出血後の脳虚血と薬剤による影響を踏まえ、状態観察とリスク管理に努めましょう。