日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.653 【クスリからわかるリスクとは?】薬剤と離床に関するQ&A

質問

くも膜下出血でオザグレルナトリウムを使用している患者さんの離床の留意点教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

くも膜下出血発症後4日から2週間の間は、脳血管攣縮による、遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia, DCI)を引き起こす可能性が高い時期です。

オザグレルナトリウムは、くも膜下出血(SAH)後に発生しやすい脳血管攣縮の予防および、脳虚血症状の改善を目的に使用され、血小板凝集を抑制し、血流を維持することで遅発性脳虚血のリスクを軽減する薬剤です。年齢や症状によっても異なりますが、くも膜下出血発症後のなるべく早い時期から2週間程度の投与が推奨されており、24時間持続投与されます。

くも膜下出血後の二次的な脳虚血によって生命予後や機能予後が悪化する場合もあるため、オザグレルナトリウムが投与されている期間は、脳虚血症状が起こりやすいことを理解し、離床のアプローチを行うことが重要です。患者さんの意識レベルの低下や麻痺の出現や進行などがないかを注意深く観察し、これらの脳虚血症状があれば、すぐに報告しましょう。

また、オザグレルナトリウムの投与により出血リスクが高まるため、皮下出血や黒色便や血便などの消化管出血の兆候にも十分注意し、転倒・転落予防対策を徹底することが大切です。安全に離床を進めるためにも、くも膜下出血後の脳虚血と薬剤による出血リスクを踏まえ、状態観察とリスク管理に努めましょう。