日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.604 【透析効率が改善!?】透析中の離床に関するQ&A

質問

透析中の運動は、運動機能の改善だけではなく、透析効率を改善するって本当ですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

本当です。運動によって、リンなどの老廃物の透析除去効率が高まるといわれています。その理由は、運動を行うと心拍数が上がり、全身の血流が増加することで、老廃物や余分な水分の除去量が増えます。骨格筋は安静時には血流が少ないですが、運動を行うことで血液量が増加するので血管内へと戻る老廃物の量が増え、結果的に血液中の老廃物が効率的に除去されるやすくなるのです。さらに、運動によってリンやカリウムの血中濃度が上昇し、除去量が増加することが報告されています(文献1)。

運動療法には透析後に老廃物が血液中に戻るのを抑制する作用もあるため、透析後の体調も安定しやすくなります。ただし、透析中の中強度以上の運動では、循環血漿量が運動後30分以後も減少したままになるため、過負荷の運動にならないように注意が必要です。透析中に運動を行う場合は、透析開始30分後~1時間後の前半に行い、ベッド上でのセラバンドを使用したレジスタンス運動、エルゴメーターを使用した有酸素運動などを行います。負荷を調整するポイントとして、使う筋肉量と収縮の強さに血圧と脈拍数は比例するので、レジスタンス運動は片側ずつ行い、休憩を挟みながら負荷量の調整を行いましょう。

[文献1]
臼井直人 透析中運動療法の運動強度が溶質除去量に及ぼす影響 透析会誌52(2):101~108,2019