日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.54 前傾側臥位実施に際しての基礎

質問

前傾側臥位を実施する際、 下になるほうの上肢はどのようにポジショニングすれば良いでしょうか? また、実施時間の目安は2時間くらいでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

前傾側臥位をとる際、下方の上肢は斜め45度に位置した状態で側臥位から前傾へ移行します。この際、基本的に下になる上肢(腋窩上)には、枕を乗せないことが大切です。また頭部の枕の高さも重要です。過度に側屈が生じていると肩関節上への荷重量が大きくなります。臨床上、「肩関節の関節可動域制限、拘縮が強い」、「点滴ルート・ドレーンの関係で十分な体位が取れない」などのケースも多いかと思われます。

このような場合は、無理に前傾まで実施せず、側臥位までに留める場合もあります。臨床での目的は、「前傾側臥位を実施すること」ではありません。真の目的は「背側の胸郭を解放する環境を整えること」にあり、「患者の下側肺障害の改善によって、酸素化の改善・肺胞換気を促すこと」です。

その対策の1つとして「仰臥位姿勢を続けない」→「前傾側臥位を実施する」があります。時間的には2時間程度がよく記載されているようですが、褥創などの発生を予防することが主眼となっているようです。よって2時間は、あくまで目安としておく程度でよいと思われます。臨床上では、処置などの問題、経管栄養の投与などで時間的な制限を受けることが多いので、そのとき優先されることを考慮して、体位調整を行うことが必要と思われます。

決してルーチンワークにはせず、ポジショニングが行えれば、モニターや聴診などで体位変換の効果があるかどうかを確認し、胸部レントゲン画像なども加味して評価していくことが必要です。