日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.4 座位耐容能向上の工夫

質問

離床を進めた結果、端座位保持が可能となりました。看護師さんへADL面を含め、何を行ってもらうよう依頼すれば良いですか?自分が携わる時間以外にも介入を行っていただき、座位の持久性を向上させたいのですが・・・(理学療法士の方より)

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

離床をすすめた結果、座位が可能になったのは素晴らしいことですね!

でも、いつもの患者さんの近くにいてアプローチできないのは頭の痛い所です。このような時こそチームアプローチで患者さんのために力を合わせましょう。

まず、患者さんの座位が比較的安定している場合は、食事を端座位で取るようお願いしています。また、清拭や着替えなども介助を加えつつ座位姿勢で行うようにします。

こうすることで必然的に座位保持時間が長くなり、持久力向上に寄与することができます。しかし、臨床では座位が安定している患者さんばかりではありません。座位が不安定な患者さんでは、監視がなくとも座位保持能力が向上するような工夫が必要となります。当研究会では次の3つの方法をお勧めします。

1.ヘッドアップ時のリーチ動作を利用する方法

患者さんをヘッドアップ(ベッド頭側挙上)した時に必要な身の回りの品(ティッシュ・ガーグルベースン・ごみ入れなど)を患者さんがリーチ(手を延ばして、物を取ること)できるギリギリの所に配置しておきます。このようにすると、患者さんは物を取る度、体幹を動かすため、体幹の支持性が向上し、座位保持能力の改善につながります。ただし、リーチ動作の度、苦痛が伴う患者さん(創痛を訴えるなど)には禁忌となります。

2.ピーナッツボールを利用する方法

講義中にもご紹介したピーナッツ型のボールを患者さんの背面に置き、凹みの部分に寄りかかれるよう座位を行う方法です。前方へ転倒しないよう、テーブルを固定し、前腕をついてテレビ鑑賞や書物を読むのも良いでしょう。意識の清明な患者さんであれば、前後左右どちらにも寄りかかれるので、比較的安全に座位の時間を稼ぐことができます。ただし、意識障害のある患者さんやせん妄を合併した患者さんでは監視が必要となります。

3.前方のテーブルに寄りかかった車椅子座位をとる方法

端座位が可能であれば、「車椅子の乗車をすすめ、座位の持久力を向上させよう」と誰もが考えます。しかし、車椅子に乗車させ、ふと気づいてもみるとバックレストに寄りかかって寝ている、といった場面に遭遇します。このような悩みを解消するには、前方のテーブルに寄りかかった車椅子座位をとることをお勧めします。前方に寄りかかっているため、背中はバックレストにつかず、体幹の筋力をある程度使わなければならない状況となります。仮に疲れて後方や左右に倒れても、バックレスト・アームレストがあるため安全です。すぐ、後方に寄りかかってしまう方には、背中に大きめの枕を縦に挿入し、なるべく重心が前方へくるように促します。

  • 1) BITTNER, E: Changes in oxygenation and compliance as related to body position in acute lung injury , Am Surg 62:1038-1041, 1996
  • 2)曷川元 編著:離床の開始基準と中止基準、実践早期離床完全マニュアル:p145,2007
  • 3)Stiller K, et al: Safety issues that should be considered when mobilizing critically ill patients, Crit Care Clin 23:35-53, 2007