日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.39 意識レベルのアセスメント、痛み刺激の与え方

質問

意識レベルが低下している患者さんの評価を行う際、痛み刺激を与えることがありますが、どの程度の力で、どこの部位に行うことが患者さんにとってよいのでしょうか?皮下出血など痕を残さない良い方法があれば是非、教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

意識レベルのアセスメントを正確に行うことは、患者さんの生命に関わることですので正しく行う必要がありますね。実際、臨床の現場や講義の中でも、よく聴かれる悩ましい質問の1つです。
まず大切なのは、意識レベルのアセスメントの最初には、痛み刺激は与えないことが原則です。意識レベルのアセスメントの最初は、声かけをせずに覚醒状態を観察します。その後、声掛けを行い、反応や会話の内容をアセスメントします。
上記の声掛けを行っても開眼をはじめとした反応がみられない場合、痛み刺激を開始します。

痛み刺激部位については、文献1)より以下の3点を紹介しています。
① 胸骨刺激:握り拳を作り中指の近位指節間関節で、胸骨の前面を強く圧迫する。
② 眼窩上孔刺激:母指先で両側の眼窩上切痕(眼窩上孔)部を強く圧迫する。
③ 爪床刺激:ペンやハンマーの柄などを用いて、左右の手指または足趾の爪床を鈍的に強く圧迫する。
(注)有効な痛み刺激の与え方としては青あざが残らないように注意する

高齢者に対しては、①胸骨刺激を強く与えて胸骨が骨折してしまう危険性もあるので、痛み刺激を与える際には、年齢も考慮して行う必要があります。
私が臨床で主に使用している方法は③の爪床刺激と、アキレス腱をつまむ刺激を用いています。この2つの方法であれば、痛み刺激の痕が残らず、強い刺激を与えることができます。
しかし、これら方法は、痛みに対して痛みを払いのける動作アセスメントができず、逃避反射としてアセスメントできてしまうデメリットもありますので、2つ以上痛み刺激部位を用いることをお勧め致します。
また、これらの評価は、いきなり患者さんに実施するのではなく、ご自身で十分な試行をしてください。
意識レベル低下は、生命に関わる、見逃してはいけない重大な症状です。目の前の患者さんの状態をアセスメントして、正確な報告が出来るよう心掛けて下さい。

1)「診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学習・評価項目」2.7版P.43:社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構 医学系OSCE実施小委員会・事後評価解析小委員会 (平成25年8月6日)