日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.37 人工膝関節置換術後のCPMについて

質問

人工膝関節術後の患者さんで、 痛みが強くて持続的他動運動(CPM:Continuous Passive Motion)が全然進まず、 膝が曲がってきません。どうすればスムーズに関節可動域は拡大するのでしょうか。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

整形疾患は痛みとの戦いでもありますよね。痛みの研究が進みだして約60年、近年ではがん性疼痛を機にさらに研究が進んでおります。では術後の痛みに対し、私たちはどのように関わればよいのでしょうか。まずは、CPMを装着する際の下記手順も確認して下さい。

・膝関節の裂隙とCPMの膝軸は合っていますか?

・その上で、足底をしっかりつけ、下腿の長さを調節します。

・1~2回動かして、大腿バンドを調整します。

(大腿後面が浮いてしまう場合はタオル等で調整します)

注意点としては

・初回時や角度を上げた時は1~2回動かして疼痛の状態を確認すること。

・速度や疼痛の状態を確認し微調整すること。

などが挙げられます。

また、リハビリテーションスタッフは可動域や疼痛に関しても、情報を持っています。連携を取れば、CPM実施の際のヒントになると思います。1)

上記、内容を踏まえて、もう一度、術後の痛みに対し、私たちはどのように関われば良いか考えてみましょう。答えは「水前寺清子さん」です。

1日1歩3日で3歩、3歩進んで2歩下がる、という楽曲があるかと思いますが、この歌詞の通り焦らず、急性期の痛みの強い時期は、強い疼痛を伴わない運動を長く、こまめに行うことがキーポイントになります2)

強い疼痛は筋の防御性収縮を生み可動域改善を阻害するばかりではなく、炎症を助長する可能性もあります。急激な可動域の改善を目指すと、翌日腫脹や疼痛が増大し、かえって可動域の改善を妨げる可能性があるわけです。そのために運動はCPMのような他動運動のみではなく、患者さん自身で動かしてもらう自動運動を活用することは、痛みを誘発しにくいため推奨いたします3)

また焦りや不安から痛みを助長することもありますので、私達としては丁寧な説明と感謝の気持ちを持って関わることも必要でしょう。可動域改善が成果ではなく、可動域が改善したことで動作しやすくなることが成果と捉え、患者さんに負担をかけないアンチストレスケアを目指しましょう。

参考書籍

1)曷川元 永谷悦子監修:整形外科ポケットマニュアル p133 2009丸善

2)高山 正伸 他:日本人工関節学会誌,36:p198-199,2006

3)黒澤としてのリハビリテーション―運動療 Jpn J Rehabil Med VOL.42 NO.2 2005