日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.36 緊張性気胸に特有の症状とそのメカニズム

質問

緊張性気胸は呼吸苦・胸痛・バイタル異常を認め、 急いで対応が必要なとても重症な病態であることがわかりました。 しかし、呼吸苦や胸痛だけでは、 大動脈解離など似たような症状を呈する病態が多くあります。 緊張性気胸で特徴的な症状があれば教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

ご質問のとおり、症状として似たような病態は多いと思います。
特に、息苦しさに加えて胸痛があった場合には、「生命に関わる病態が隠れている可能性がある」と考え対応する必要があります。
今回は、呼吸苦・胸痛・バイタル異常から考えられる緊張性気胸についてご説明します。
肺から空気が漏れてしまうことを「気胸」と呼びますが、漏れた空気は胸腔内に溜まってしまいます。
空気は肺から胸腔には簡単に漏れますが、胸腔から肺には逆流できない一方弁(チェックバルブ機能)となります。
そのため、呼吸のたびに肺から胸腔内に空気が漏れてしまいます。
この時の所見としては、「患側の呼吸音減弱」「患側の鼓音」「左右の胸郭差」が得られますので、一つでも異常を疑えばX-PやCTの依頼を考慮しましょう。
さらに胸腔内に溜まる空気は、いずれ片方の胸腔だけではおさまりきれず、健側の肺や心臓を圧迫します。
結果、「気管偏移」「静脈還流の圧迫」「心臓の拡張障害」を引き起こします。
静脈還流の圧迫・心臓の拡張障害により、頸静脈怒張を認めるのも特徴的な所見です。
さらに、治療が遅れると、胸腔内の空気は逃げ道を求めて、肋間を突き破ります。
結果、皮下気腫が認められ、触診では「握雪感」という特徴的な症状を呈します。
気胸が発生してから、皮下気腫が形成されるまで、処置が遅れると心臓への圧迫はかなり進行しておりますので、重篤な状態と考えられます。
呼吸苦・胸痛の訴えは重症な病態を意味していることだけではなく、それぞれ特徴的な所見も知っておくことが大切になります。