日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.32 ノーリアの分類と離床の可否について

質問

心不全のノーリア分類にてC(Wet-Cold)の状態は、 集中治療を要する時期なので積極的離床は控えるという事は理解できます。 しかし、B(Wet-Warm)やL(Dry-Cold)といった範囲にある病態では、 どの程度、離床をしてもよいのでしょうか? 軽い負荷であれば行っても良いのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

ノーリア分類は急性心不全の臨床的病型分類です。その分類は低還流所見、うっ血所見より、A(Dry-Warm)、B(Wet-Warm)L(Dry-Cold)、C(Wet-Cold)の4つに分けられます。
A(Dry-Warm)では、低還流、うっ血ともに「なし」と判断されます。逆にC(Wet-Cold)の状態は集中治療を要する時期と判断されます。
ご質問の内容はBやLの離床をどの程度、実施して良いか?とのことですが、微妙な時期ですので一番悩むところだと思います。
まず、Bの時期ですがこれは「うっ血所見はある」けど「低灌流所見はない」時期を指します。イメージとしては「血圧が保たれた左心不全」と考えて良いでしょう。
従って座位、立位など抗重力肢位をとっても血圧が下がる心配はありません。それどころか、座位や立位を行うことで余分な血液が下肢の方へシフトし、静脈還流量を抑えることが出来ますので、心負荷を軽減させる効果も期待できます。
つまり、「肺のうっ血所見」を軽減させる事ができ、これは薬剤で言うと「利尿剤」と同じ効果と言い換えることもできます。
離床で薬剤と同じ効果が期待できるなんて驚きだと思いませんか?

次にLの時期ですがこれは、「うっ血所見はない」けど「低灌流所見はある」時期を指します。イメージとしては「単独の右心不全」と考えてよいでしょう。循環分野では脱水の場合がLの時期にあたります。よって離床によって血圧低下を引き起こす可能性があります。
勿論、評価目的にて離床する事は大切ですが、出来れば輸液などで循環血液量を増やしてあげた後の離床の方が、患者さんにとって優しいのかもしれません。
まとめますと、BやLの時期ではその病態をイメージした上で離床を行うことは可能という事になります。もちろん、介入前のアセスメントをしっかり行った上で、モニタリングを行い安全な離床やケアを行うようにして下さい。