日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.29 リザーバー付マスクの袋が膨らまないとき

質問

リザーバー付マスクの袋が膨らまない時に、 弁で調節した方がよいということですが、詳しく教えてください

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

リザーバー付マスクは酸素療法のデバイスの中では低流量システムに分類される場合が多く、高濃度酸素投与が可能です。高濃度酸素投与するためには、マスクに付いている袋を膨らませて、そこに100%酸素ガスを溜めておく必要があります。つまり袋が膨らまないと目的が果たせません。袋が膨らまない原因は大きく2つあります。

1.酸素流量が少ない
2.換気量が多い

袋が膨らまないときの対策は「流量を上げる」か、「弁を開放する」の二通りが原則です。原因別に対策を考えてみましょう。

1.酸素流量が少ない場合、袋を膨らましておくのに十分な量が足りず、患者が吸気の度に袋が萎んでしまいます。基本的に6L以下の流量では袋を膨らませておくことが出来ません。よって流量を6L以上に設定することが必要です。
2.換気量が多い場合も、袋の中の酸素ガスを吸い込むため、患者が吸気の度に袋が萎んでしまいます。対応としては患者さんの換気量以上の流量を流すか、マスクについている弁を片方開放することです。

弁を開放すると、袋の中の酸素ガスと、マスクの穴から入ってくる外気を吸うことができます。

例えば一回換気量が700mlの患者さんがいたとします。(吸気1秒 呼気3秒 呼吸数15回)通常袋の中には600ml酸素ガスが溜まります。この患者さんに6L/分の流量で酸素ガスを流すと、1秒間に流れる酸素の量は100ml(6000ml/60秒)です。吸気に吸う100mlと、呼気の間袋に溜まる酸素は300mlで、合わせて400mlの酸素ガスを吸うことができます。

この患者さんの一回換気量は700mlですので400mlの酸素ガスを吸いきったところでそれ以上吸えなくなってしまいます。なぜならこのマスクは弁がついていて外から外気が入ってこないようになっているからです。
このようなときに弁を開放することで残りの300mlを外気から吸うことになります。
ただしこの場合は大気が混ざるため、高濃度酸素投与は出来ません。
またこれ以外の要因として袋に穴が開いている場合も、当然袋が膨らみませんので使用前に確認が必要です。
リザーバー付マスクは高濃度酸素投与が出来る反面、長時間使用すると酸素中毒を引き起こしますため、適応と合併症について十分理解しておく必要があります。
併せて押さえておくようにしましょう。