日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.27 リクライニング式車いすでの前方へのずれ対策

質問

体幹を前傾にすることが難しい利用者さんで、リクライニング式車いすを使用し日中離床を行っています。しかし、すぐに前方にずれてしまい座位修正が必要となります。何か良い方法はありますか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

確かにリクライニング式車いすを利用している方では、座位修正の介助一つにしても、困難なことが多いと思います。
まず、リクライニング式車いすについて少し説明いたします。
リクライニング式車いすとは、背中側が縦に長いバックレストがあり、そのバックレストの角度が調節できる車いすです。実はバックレストの角度調節が、すぐに前方へずれてしまう原因になっていることがあります。
皆さん、立位の状態で、頭部・背中・腰を壁にぴったりつけて、壁から30センチほど前方に両足を位置してください。
どこに力がかかりますか?
前方へずれようとする力が両足の踵に、加わっているのがわかるでしょうか?
実はリクライニング式車いすも同様のことが生じ、頭部・背中・腰をバックレストに押し付けることで、臀部は前方にずれようと力が加わっているのです。(褥瘡原因の一つ)
前方へのずれ対策で大切なのが、足の位置となります。
皆さん先ほどの頭部・背中・腰を壁につけて、足をどの位置においたら、踵にずれる力が働かなくなりますか?

踵を壁につけ、ぴったりと立つ。もしくは足底接地をやめること(長座位)、どちらかの方法で踵のずれはなくなります。
リクライニング式車いすの方にも同様の考えを用います。
今回の利用者さんのように体幹が前傾できない後方へのつっぱりが強い患者さんを考慮して、まず、バックレストの角度を後方に倒し、次いで、フットレストの角度を同様に上げます。
そうすることで、レッグレストに下腿後面全体の荷重を分散させることで、臀部の前方へのずれは少なくなります。(全くずれがなくなるわけではないので、長時間の同一姿勢は危険です。また、車いすに用いるクッション等の考慮も大切です。)
フットレストが上げられない場合には、下腿後面にタオルやクッションをいれて、下肢の角度調節を行うポジショニングも効果的です。
より効果的なのは、ティルティング車いすを用いることです。ティルティング車いすとは、バックレストと座面が一体となって傾く機能が備わっており、座面にかかる力が頭部や背中に分散することができ、臀部の前方へのずれる力も抑えることができます。
ぜひ、施設で必要な車いすを検討ください。