日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.230 【お財布がない!妄想に対する上手い対応とは】

質問

以前、認知症で物盗られ妄想のある患者さんに、「あなたが財布を盗ったんでしょ!」と怒鳴られて落ち込んだことがあります。上手な対応をするにはどうすればよかったのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

物盗られ妄想は、「自分がなくした」と考えるよりも、「誰かに盗られた」と、他人に責任転嫁することで、自分の不安を消している防衛反応と考えられています。なので、怒鳴られても、自分が責められているというより、患者さんが不安を感じていると思って、落ち込まないようにしてください。

私の経験した物盗られ妄想の利用者さんの例をお伝えします。

その方の様子が落ち着いている時に話を聞いてみると、「お金がないと、デイサービスのみなさんに迷惑をかけてしまうから」と、語られていました。つまり、その方は楽しく通っているデイサービスのスタッフに迷惑をかけたくないという想い(心配)から、財布を盗られる不安があったと想像しました。

そこで、利用者さんと一緒に財布を見つけやすい場所を決め、どうしても見つからない場合は、「お金はご家族からいただいていますよ」と、声掛けをするようにすると、物盗られ妄想が落ち着いたことがあります。物盗られ妄想では、症状が落ち着いているときにその方のニーズを探り、先回りした対応をすることで上手く対応できることがあります。

参考にしてみてくださいね。