日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.23 離床と血液データの解釈について

質問

血液データでhb8.0g/dL以下、TP6.0g/dL以下など離床を考えたほうが良いと聞きます。端座位までなら可能、ギャッチアップまでなら可能など基準はありますか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

離床を行う上で「血液データがこの値だから離床はここまで」という明確な基準は残念ながらありません。また、他のデータもそうですが、一つの指標だけを見て何かを判断するということは誤った判断を導く恐れがあります。
例えばHb値は貧血の指標となりますが、脱水(みかけ上Hb値の上昇)や体液過剰(みかけ上Hb値の低下)で血漿量が変化すると影響を受け、「みかけの値」をとるため、その解釈には注意が必要です。また、出血直後では血球-血漿が同程度失われるため、たとえ大量の出血であっても正常値を示すことがあります。ちなみに慢性に経過する貧血は短時間に生じる貧血(多量の出血など)に比べて症状が強くないため、同じ値でも日常生活に支障のない方もいます。
ですので、客観的情報(血液データ、画像所見など)と臨床所見とを総合的に診て、治療が開始されていることを確認し、現在の状況をアセスメントし介入を検討します。ご質問のHb8. 0g/dLという値は臨床家として「これは大変!」と思う値ですよね。(呼吸ケアと早期離床ポケツマニュアルP34より)この値だけを基準に「離床はさせない」ということではなく、この数値をもとにリスク管理を考えるということです。「組織の酸素欠乏に基づく症状(めまい、頭痛、惓怠感など)」とそれを補うための「生体の代償作用に基づく症状(息切れ、動悸、頻脈など)」の出現に注意し、対応を考えた上で離床を行いっていくということがこの例にあたります。ご理解いただけたでしようか?