日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.18 心電図をみたら血圧もみましょう!

質問

講義の中でPVC2段脈の場合は血圧低下に注意しましょうとありましたが、詳しく教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

循環器疾患のみならず、どの患者さんもケアや離床を行う際は、病態の理解とリスクをしっかりと把握して介入することが大切です。 ご質問のPVC2段脈と血圧低下について、症例を通して説明していきます。

69歳男性。血圧110/53 心拍数70拍/分(PVC 2段脈が続いている状態)
端座位に離床すると気分不快感とめまいを訴え、その時の収縮期血圧は80 mmHgでした…。

いわゆる起立性低血圧ですが何が原因でしょうか?
心室性期外収縮(PVC : premature ventricular contraction)は、私達が最も遭遇する不整脈のひとつです。 発生頻度によって重症度が変わりますが、一時間あたり数回~数十回程度であれば多くの場合問題にはなりません。 2段脈というのは、洞調律とPVCが交互に出現するものを言います。この場合何故血圧に注意が必要か考えてみましょう。
血圧というのは、心拍出量×全末梢血管抵抗です。不整脈の場合、心拍出量が低下して血圧が不安定になります。PVCも例外ではありません。 PVCは心室内で異所性興奮が発生し、心室より収縮が開始される病態です。 心房から心室への血液移動のタイミングを無視して、心臓は収縮しますので、心拍出量は低下します。
症例は2段脈が続いている状態で心拍数70拍/分でした。一見正常心拍数に見えますが、その内半分はPVCであり、有効な心拍出量が出ていない可能性があります。単純に考えるとまともに血液が拍出されているのは35拍/分であり、通常の脈の半分しか循環血液が回せていない計算になります。 結果として起立性低血圧を起こしてしまいました。このような場合、抗不整脈薬の適応となります。 実際にはPVC 2段脈は離床禁忌の不整脈ではありませんが、このように血行動態が不安定になる場合には治療が優先となります。
これはPVC以外の不整脈にも言えることです。不整脈になると循環(心臓の動き、血管を流れる血液)が通常のタイミングで回らなくなりますので、波形のみで判断せず、血圧、心拍数(脈拍数)の変化にも十分注意して安全な離床を目指しましょう。