
質問
胃がんで腹膜播種があるstageⅣの患者さんですが、倦怠感が強く腹水も貯留しており離床が進みません。血清アルブミン値も2.1g/dlと低値です。どうすれば良いでしょうか
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣
まず、離床が進まない背景から整理しましょう。
進行がんの患者さんは低栄養に陥りやすく、さらに、胃がんなどの消化器がんは、消化吸収機能の低下や食欲不振で低栄養になりやすいです。
血清アルブミン値は3.2g/dl未満となると、代謝異常の病態である悪液質に当てはまり、悪液質では、がんの進行が進み治療の効果が乏しく寝たきりとなり、予後が3ヶ月程度と見込まれている状態では不応性悪液質と呼ばれます。
この患者さんの場合だと質問から察するに、不応性悪液質に当てはまり予後が厳しい状態かと思われます。
その上で、離床の考え方を提案します。
経験から、このような状況の患者さんは、①一度でいいから家に帰りたい②つらいことはしたくないから楽に過ごしたい、の2パターンに分けられると思います。
①の場合であれば座位、立位、車いす乗車、病棟トイレ歩行など、ADLに沿った軽めの離床を中心に出来る範囲で離床レベルを上げていきます。
②の場合は、褥瘡や肺炎などの二次的な合併症を防ぐために、ベッドの背もたれを上げたり、体が楽になるようなポジショニングを考えたりして、やみくもに離床を進める必要はないかと思います。
がんの終末期の場合、患者さんがそれを理解されているかどうか、その上で患者さんのneedが何かを医療者が把握していることが重要です。それによってアプローチが全く変わってしまいます。
がんの臨床ではカンファレンスが本当に重要だと思います。