日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.16 脳卒中患者の頭部クーリングは禁忌?

質問

頭部クーリングは脳卒中で禁忌と聞いたことがありますが本当ですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

頭部のクーリングは臨床の場で良く用いられます。しかし、頭部の冷却だけでは解熱に対して、効果がないことは良く知られている事実です。
では、質問者様がお考えになる「脳卒中患者さんに禁忌となっている理由」は何でしょうか?頭部の冷却が脳血管を収縮させるという考えからでしょうか?
しかし、頭部の冷却によって血管が収縮し、脳梗塞などの脳血管疾患が悪化したということは、聞いたことが無いのと同時に、そのような文献を探すことができませんでした。
氷枕を使用した後頭部冷却を行った患者の、前額部深部温(脳内温度を反映するとされる)を測定する研究では、深部温の低下は認められなかったという報告があります。これは後頸部を冷却することでは、脳内環境の変化を来していないということが推測されます。また他にも蘇生後脳症に陥り、後に意識清明となった患者様の前額部深部温を測定した研究では、頭部の冷却により深部体温の変化は無かったことが報告されています。
これらより頭部の冷却だけでは、頭蓋内の温度変化を来すことはないと考えられ、それは同時に脳血管の収縮といった現象を引き起こすことは、考えにくいと思います。
しかし、頭部の冷却により「気持ちがいい」「すっきりする」と言ったことを患者さんより聞かれることは良く経験することです。安楽・安寧を考えるのであれば頭部冷却を拒む必要は、上記の理由からないと思います。

参考文献
玉山 浩一郎(兵庫県立大学 看護学部), 高鳥 眞理子, 矢島 直樹:冷罨法が発熱患者の生体におよぼす影響.
日本看護学会論文集: 看護総合(1347-815X)39号 Page330-332(2008.12)
今泉均.坂野晶司.伊藤靖.金子正光(札幌医科大学医学部救急集中治療部):蘇生後脳症症例における頭部冷却時の深部体温の変化と脳循環・代謝の検討.臨床体温.16巻1号.1998