日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.132 胸水貯留時の胸腔ドレーン挿入と利尿薬投与の違い

質問

胸水貯留に対して、胸腔ドレーンを挿入する場合と利尿薬での対処の違いはなんですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

ご質問の通り、胸水貯留の量や原因によって治療は異なります。胸水貯留に対しては、胸水穿刺やドレーン留置といった外科的治療と、利尿薬投与や経過観察のみで対処する内科的治療が挙げられます。もちろん原因疾患の治療も並行して行われます。
胸水穿刺、胸腔ドレーンの適応は、CT、超音波検査、または側臥位X線で厚さ10mm以上の胸水、および新たな、または病因不明の胸水を有する場合です。
一般的に、胸腔穿刺を必要としないのは、左右対称の胸水があり胸痛および発熱がない心不全患者のみとされており、このような場合では利尿薬を試すことができます。
また、胸水が3日以上持続する場合を除いて、胸腔穿刺、胸腔ドレーン留置を回避することもできます。
胸腔ドレーン留置に関しては、がん性胸水など疾患によって胸水の産生・貯留の状態が異なるため、医師がその状態に応じて胸水穿刺、ドレーン留置、利尿薬、経過観察の指示を出しています。
外科的治療である、胸水穿刺、胸腔ドレーン挿入時では、気胸や腹腔内臓器の穿刺などの合併症のリスクが生じます。
胸腔ドレーン挿入後に離床を開始する際には、排液へ血液が混入していないか、皮下気腫は生じていないかアセスメントしながら進める必要があります。
特に皮下気腫を認める場合には、肺から漏れた空気により心臓を圧迫し、致死的な症状である緊張性気胸へと移行する可能性がありますので注意が必要です。
しっかりとアセスメントを行い、安全な離床を心がけてください。