日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.123 リードレスペースメーカーとは?

質問

リードレスペースメーカについて教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

講座では一般的に広く普及しているリード付きのペースメーカを紹介しましたが、最近ではリードレスペースメーカが注目されています。

従来のペースメーカは、胸部の皮下ポケットに植込まれるペースメーカ本体(ジェネレータ)と、同部位から心臓まで送達される導線(リード)からなり、右房または右室の任意の部位に留置しペーシング治療を行います。
そのため、鎖骨下静脈穿刺時や、留置したリードと皮下に植込まれたジェネレータが原因で、出血、感染、穿孔や断線など、様々な合併症が起きることが問題とされてきました。
最近、新しく開発されたリードレスペースメーカは、鼠径部から大腿静脈を経由して右室内に直接留置することを目的にした、小型化(1.75g)されたペースメーカです。
本体を心内に留置することで、従来のペースメーカが必要とした植込み機器用の皮下ポケット作成、およびペーシングリードの挿入・留置が不要となります。
さらに、従来と同様の便益を享受しつつ、これらに起因する合併症(リードによる穿孔や断線)が回避されることが期待されています。

リードレスペースメーカは適応基準が設けられ、
1. 心房細動を合併した、症状のある発作性もしくは持続性の高度房室ブロックの患者
2. 心房細動を合併しない、症状のある発作性もしくは持続性の高度房室ブロックで、右心房へのリード留置が困難、または有効(有用)でないと考えられる患者
3. 症状のある徐脈性心房細動または洞機能不全症候群で、右心房へのリード留置が困難、または有効(有用)でないと考えられる患者とされています。

また、従来のリード付きペースメーカでは、リードの断線予防のために肩関節の可動範囲が制限されることや、ジェネレータ埋め込み部による炎症で腫脹や痛みのために、離床が制限されることもありました。

しかし、このリードレスペースメーカではそのような問題はなく、より離床や活動が促進しやすいデバイスと考えられます。

参考文献;
日本不整脈心電学会ホームページ: http://new.jhrs.or.jp/guideline/statement201709_01/