質問
患者さんによってQRS波の高さ(大きさ)が違います。高さは何を意味しているのでしょうか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣
心電図は、P波、QRS波、T波から構成されており、細くて尖った形のQRS波は心室の興奮を意味します。
また、心電図の記録用紙は、横軸が時間(sec)で、縦軸は電位(mV)を表します。
電位を分かりやすく言い換えるならば、心臓が作り出す電気的エネルギーの強さになります。
全身に血液を送り出すために左室は厚い心筋で覆われおり、心電図上でQRS波の波高が大きいのは、左室の心筋が作り出す電気的エネルギーが強いためです。
QRS波の波高がより大きくなる原因は左室肥大です。心筋の肥大を起こす=心筋の細胞が増えている状態であり、電気的エネルギーが強まることでQRS波の波高はより大きくなります。左室肥大を起こす疾患としては、高血圧、弁膜症、心筋症などが挙げられます。
また、QRS波の波高が逆に小さくなるのは、心臓が作り出す電気的エネルギーの発生力の減弱、心臓と電極の間の電気抵抗が増している場合です。
前者は心筋梗塞などにより心筋がダメージを受けている状態を意味します。後者の主な要因としては、肥満、前胸部の浮腫、心嚢液・胸水の貯留、肺気腫、気胸などが挙げられます。QRS波の波高が小さい場合には、心臓のみならず他の要因を考慮することが必要です。
QRS波の波高を評価することは、患者さんの心臓の状態を評価することに繋がります。
しかし、電極の位置が少しでも変われば、心電図の波形は変化することも考慮してください。 講座では、電極を心臓の電気刺激を見るカメラだと例えました。カメラの位置が変われば見え方が変わります。そのため、マーキングなどを行って、同じ部位に電極を貼って評価することが大切となります。