日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.121 薬剤性顎骨壊死のメカニズムとは?

質問

ビスホスホネート薬における顎骨壊死のメカニズムについて教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

近年、がん患者のケアやリハビリテーションに悩まれる方を多く散見します。今回の質問である「ビネホスホネート薬」とは、骨を壊す過程を抑えて骨量の低下を抑え、骨を強くし骨粗鬆症による骨折などの危険性を低下させる薬として使用されます。また、腫瘍の骨転移などによる骨の脆弱性を来す疾患に使用する場合もあります。

 しかし、薬剤には必ず副作用があり、今回のビスホスホネートや抗RANKL抗体を使用した時に起こる重大な副作用に、薬剤性顎骨壊死が挙げられます。

 原因について明確にはわかっていませんが、2016年に発表された日本骨代謝学会など6つの学会で組織された顎骨壊死検討委員会編「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」によると以下の5つの原因が挙げられています。

1)骨吸収抑制薬による骨リモデリングの抑制と、過度の破骨細胞活性の抑制

2)ビスホスホネート投与による口腔細菌の易感染性増加

3)ビスホスホネート投与による口腔上皮細胞のリモデリングおよび遊走抑制

4)骨吸収抑制薬投与による免疫監視機構の変化

5)ビスホスホネートの血管新生抑制作用

上記より顎骨は歯とつながっているため、口腔内の細菌にさらされる危険が高いといわれています。また、咀嚼による口腔粘膜のダメージや抜歯などで、粘膜の下にある顎骨は容易に感染します。

 もともと感染しやすい環境であるということが、顎骨壊死発症をしやすい原因でもあるようです。 顎骨壊死を予防するためには口腔内の衛生状態を良好に保つこと、抜歯やインプラントなど侵襲的な歯科治療を必要以上に行わないこと、が重要とされています。また、顎骨壊死の初期症状として歯肉の腫れ、口内炎、歯のグラつきなど口腔内の症状や発熱、倦怠感といった全身の症状が出る場合もあります。

 口腔ケアの大切さを再確認しながら、ビネホスホネート薬を服用している患者さんの場合は、顎骨壊死の初期症状を見逃さないよう、注意深くモニタリングする必要があります。

 参考文献

・顎骨壊死検討委員会:骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー 2016 

・米田俊之:ビスホスホネート製剤関連顎骨壊死の病態とそのマネージメント 2008