日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.108 せん妄と認知症の違いについて

質問

せん妄と認知症の違いが分かりません。せん妄も認知症も意識障害なのでしょうか。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

せん妄も認知症も、見当識障害や注意力障害など共通する症状を多く呈するため、 完全に見分けることは難しいです。実際に、認知症の既往は、せん妄発症の代表的な危険因子であることが分かっており1)、両者が併存する病態も多く存在します。

せん妄と認知症を見分けるための最大のポイントは、「急性の発症」と「症状の変動」です。

講演で紹介したせん妄スクリーニングツール「CAM(Confusion Assessment Method)」によると、「急性の発症」と「症状の変動」が存在することは、せん妄を判定するための必須項目となっています。つまり、せん妄は認知症と違って、発症時期をある程度特定でき、 1日のうちで症状の変動を認めます。

夕方になると急に見当識障害が出現した。夜間は幻覚が見えておりルート類を引っ張ろうとする危険行動を認めたが、朝になると幻覚がなくなり危険行動も消失した。これらは、せん妄に特徴的な症状です。

また、離床を支援する上で忘れてはいけないポイントは、せん妄は認知症と違って、意識障害であるということです。意識障害には必ず原因があります。

特に注意すべきは直接因子(全身状態の悪化)がせん妄の原因となっている場合です。このような状況での無理な離床は、患者さんを危険に晒してしまう可能性があります。せん妄患者さんの離床を支援する前には、せん妄の背景に全身状態の悪化が存在していないかを注意深くアセスメントすることが重要です。勿論、せん妄の発症要因には全身状態の悪化に他にも、鎮静剤の有無や睡眠等の因子も考えられますので、全身状態や投与薬剤、睡眠状況などを多角的に評価し、適切なアプローチを選択することが必須となります。

1. 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・ せん妄管理のための臨床ガイドライン.日本集中医誌 2014;21:539-79.