日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.10 消化器外科領域における離床と疼痛

質問

消化器外科術後の患者さんを術翌日から離床させようと頑張っていますが、痛みが強いからと断られてしまいます。どうしたら上手く離床していただけるでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

外科術後の疼痛は離床を阻害する大きな原因の1つです。以下に挙げる3点に注意をして離床を行ってみてください。

  1. 術前オリエンテーション
    手術を受ける患者さんに対し、術後の離床や呼吸器合併症対策について十分インフォームしておくことが大切です。質問してくださった方の1人が「医師・看護師より術前のオリエンテーションを行っている」と書かれていましたが、どの程度の内容をオリエンテーションしたかが重要になってきます。術後疼痛が原因で離床が遅延する可能性がある症例(開胸を伴う症例など)では、実際の動作を交えて術前に疼痛を惹起しにくい起き上がり方法などを指導しておく必要があります。この部分では医師・看護師に加えて、動作の専門である理学療法士や作業療法士が直接指導にあたることも重要と考えます。
    また術後に臥床続けば、無気肺・肺炎などの呼吸器合併症のリスクが増加することを強調し、患者さんが自ら離床するよう意識づけすることも大切です。詳細は、実践!早期離床完全マニュアルP169「オリエンテーションのポイント」を参照してみて下さい。
  2. 適切な疼痛コントロール
    手術後はその施設ごとで決められた鎮痛薬の投与プロトコルがあると思います。しかし、プロトコル通りに鎮痛薬の投与が行われていても、その患者さんに効果が得られていない場合もあります。このような場合、無理に離床を進めると不要な負担を患者さんに強いるばかりでなく、信頼関係さえも損なわれてしまいます。通常のプロトコルでは疼痛コントロールが不十分だと考えた場合、主治医・麻酔科医を中心としたチームで話し合い、他の薬剤の追加や疼痛情報の共有化を図るべきと考えます。
  3. 疼痛に配慮した動作介助法
    初めて端座位を行う時、どのような起き上がりの方法をとっていますか?消化器外科のみならず外科術後の起き上がりは、ベッドが平らな状態から行うのではなく、Head upした状態から行うと患者さんの負担が軽減できます(テキストP180)。電動でHead upする機能をもったベッドでは、患者さんのせん妄の有無を確認した上で、なるべく自分で起き上がれるよう指導することも大切です。また、手動式が多い病棟では電動式のベッドを術後どの患者さんに使用するかなど、術式や侵襲の度合いに応じて検討することも必要です。